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脚光を浴びているヘリコプター搭載護衛艦(DDH)

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は、昨年(2018年)に於いて空母化の閣議決定や南シナ海・インド洋への派遣訓練など、何かと脚光を浴びていることからDDHについて解説する。
まずは「護衛艦とは」どう言う艦艇なのかを述べた上で、「DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の詳細」について述べて行く。

護衛艦と言うと船団等を護衛するイメージを持つが、海上自衛隊の「護衛艦」とは他国の「駆逐艦」に相当する。建前上、自衛隊は軍隊でないので、軍艦である駆逐艦と名乗らず護衛艦と名乗っているに過ぎない。現在の駆逐艦は、対潜、対空、対艦と幅広い能力を持ち、任務は多様化している。

海上自衛隊が保有する現役の護衛艦は、以下の4種類に分類される。

汎用護衛艦

汎用護衛艦(DD:「D」はDestroyerの頭文字であるが、アメリカ海軍がタイプライターで打った時に、1文字だけでは見ずらいとの理由等により同じ文字を2回打ったことから重ねて表記)で、多用途戦闘艦である。なお、海外で「Destroyer」と言えば、駆逐艦のことである。

DD-119 「あさひ」(護衛艦「あさひ」型)

DD-119 「あさひ」(護衛艦あさひ型)
・基準排水量:5,100t
・長さ×幅:151m×18,3m
・哨戒ヘリコプター1機を搭載。

ミサイル護衛艦

他の護衛艦もミサイルを搭載しているが、ミサイル護衛艦(DDG:「G」はGuided Missileの頭文字)は艦隊防空用の特に優れた対空ミサイルを搭載している。
1990年代以降に就役したDDG(こんごう型及び、あたご型 )はイージスシステムを搭載してる。

DDG-177「あたご」(護衛艦あたご型)

DDG-177「あたご」(護衛艦あたご型)
・基準排水量:7,750t
・長さ×幅:165m×21m
・哨戒ヘリコプター1機を搭載(常時搭載機なし)。

ヘリコプター搭載護衛艦

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH:「H」はHelicopterの頭文字)は、他の護衛艦と違い、複数の哨戒ヘリコプターを搭載できる。
現役のDDHは、どれも全通甲板であり複数機連続発着が可能となった。

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の後方上空から

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)
・基準排水量:19,950t
・長さ×幅:248m×38m
・哨戒ヘリコプター7機、救難・輸送ヘリコプター2機

近海警備用護衛艦

近海警備用護衛艦(DE:「E]は Escortの頭文字)は「小型護衛艦」とも言われ、汎用護衛艦をコンパククト化し、多様な任務への対応能力の向上を目的としたものである。各地方隊で運用され、おもに沿海域で任務している。

DE-229「あぶくま」(護衛艦あぶくま」型

DE-229「あぶくま」(護衛艦あぶくま型)
・基準排水量:2,000t
・長さ×幅:109m×13.4m

海上自衛隊が保有するDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)は、搭載するヘリコプターを運用するだけでなく、さまざまな役割を担うための能力を持っている。
現役のDDHは4隻であり、その全てがヘリコプターを発着艦させるための甲板が艦全体を覆う全通甲板を採用し、また艦橋(高所に設けられた指揮所)も艦尾から艦首に向かって右端にあるため、ヘリコプターを甲板に並べて駐機できる。見た目は航空空母そのものであり、「ヘリ空母」とも言われている。
以下、DDHの詳細について、「DDHの分類」、「DDHの用途」、「ひゅうが型といずも型の比較」及び「運用面での変貌」の観点から解説する。

現役DDHは、2つの型があり、各型毎に2隻が存在し、全体として4隻である。
型名、そのスペック及び各艦名は以下のとおりである。

ひゅうが型

・基準排水量:13,950t
・主要寸法:長さ 197m、幅 33m、深さ 22m、喫水 7m
・馬力:100,000PS
・速力:30kt ※1
・乗員:約380人
・ヘリ:哨戒ヘリ×3機、掃海輸送へり×1機(最大搭載機数11機)
・備考:それまでのDDHと比べた特徴は、全通甲板になり、同時に複数のヘリを発着艦できる性能を持つことになる。

【DDHー181「ひゅうが」(2009年3月18日竣工)】

DDH-181「ひゅうが」(護衛艦ひゅうが型)

【DDHー182「いせ」(2011年3月16日竣工)】

DDH-182「いせ」(護衛艦ひゅうが型)

いずも型

・基準排水量:19,950t
・主要寸法:長さ 248m、幅 38m、深さ 23.5m、喫水 7.1m
・馬力:112,000PS
・速力:30kt ※1
・乗員:約470人
・ヘリ:哨戒ヘリ×7機、輸送・救難ヘリ×2機(最大搭載機数14機)
・備考:全通甲板

【DDHー183「いずも」(2015年3月25日竣工)】

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の側面

【DDHー184「かが」(2017年3月22日竣工)】

DDH-184「かが」(護衛艦いずも型)の前方上空から

※1 kt
ノット(knot)の記号。1時間に1海里(1.852km)進む速さの単位であり、1ktは時速1.852kmである。例えば30ktとは時速55.56kmのことである。

DDHは「ヘリ空母」とも言われるように、哨戒ヘリコプターによる対潜作戦として働くことを目的にしているが、それ以外にも幅広い任務に対応する多用途性を持ち合わせている。DDHの用途として、以下のものが挙げられる。

対潜水艦

潜水艦は海軍兵器の中で手強い存在であるが、潜水艦の天敵となるのが哨戒ヘリコプターであり、その哨戒ヘリコプターを搭載するのがDDHである。現役DDHはどれも全通甲板であることから、複数の発着艦スポットが確保されヘリコプターを同時に発着艦可能となり、更に甲板全体に万遍なく、機体を拘束するための係留環が設置されているので、発着艦スポット以外の場所でも駐機できる。

【発着艦スポットに駐機しているヘリ】 【無数の係留環】
発着艦スポットに駐機しているヘリ 甲板上の無数の係留環

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

敵の潜水艦を探知し追尾するには、哨戒ヘリコプターからソナー(音波によって物体を探知する装置)を連続して海面へ投下したり、ディッピング・ソナー(吊下式ソナー)を吊るして長時間ホバリングするなどの作業を連続させる必要があり、そのために哨戒ヘリコプターを交代させながら連続して飛行しなければならない。更に攻撃には、魚雷(弾頭を付け水中を航行し、目標物を破壊する兵器)や爆雷(水中の一定の深さに達すると爆発する兵器)を搭載する別の哨戒ヘリコプターが投入される。
このような連続した対潜水艦戦を行うには、哨戒ヘリコプターの同時発着・同時運用が可能となっている必要がある。

【ホバリングする哨戒ヘリ】 【ソナーを降ろす哨戒ヘリ】
ホバリングする哨戒ヘリ ソナーを降ろす哨戒ヘリ

※中国軍艦が監視する中、南シナ海で訓練する哨戒ヘリ(2018年)。バックの艦艇は「かが」。

【ディッピング・ソナー】 【投下される魚雷】
ディッピング・ソナー ヘリから投下される魚雷

※「かが」が金沢港に寄港した時(2017年)に初めて実物を間近で見たが、こんなに大きいものだと思っていなかった(ソナーの上部一部しか写っておらず)。

また、同時に複数のヘリコプターを発着艦させるために、艦橋構造物の艦尾側には甲板全体を見渡せる航空管制室(空港の管制塔に相当)が設けられているのも、他の護衛艦にない特徴である。

【航空管制室】
航空管制室 航空管制室(第2エレベーター上から撮影)

※窓が並んでいるところが航空管制室である。右側写真は第2エレベーター上から撮影。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

ヘリの格納と整備

全通看板の直下は広い格納庫になっており、艦首側と艦尾側に備えられている2基のエレベータにより格納庫と飛行甲板を繋いでいる。

【格納庫】
格納庫(艦首側から艦尾側を撮影) 格納庫(手前が第1エレベーターで奥が車両格納庫)

※左写真は艦首側から艦尾側を撮影。右写真は手前が第1エレベーターのスペースで、奥(艦首方向)が車両格納庫であり、天井(格子状の黒っぽい物体)がエレベーターの床裏面で、飛行甲板へ向かって上昇中。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

【第1エレベーター】 【第2エレベーター】
第1エレベーター 第2エレベーター

※左写真の第1エレベーターは格納庫に降りた状態。右写真の第2エレベーターは飛行甲板に昇った状態。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

格納庫の区分けは、艦首側から次のとおりになっている。
支援車両(牽引車、清掃車、フォークリフトなど)を格納する車両格納庫、艦首側の第1エレベーター、ヘリを格納する航空機第1格納庫、航空機第2格納庫、(ひゅうが型は、艦尾側の第2エレベーター)、整備を行う整備格納庫となる。これらの区分けはエレベーター以外に物理的に遮るものがないので、状況により併用も可能である。
なお、第1と第2航空機格納庫は、扉で物理的に区切るこができ、火災時の延焼を食い止める役割を持つ。

格納庫は最大搭載機数(ひゅうが型:11機、いずも型:14機)の全てを格納でき、それでもヘリコプターの移動や入替えが行えるスペースも確保できる。また、ヘリの整備・点検作業を行うための広いスペースが確保されているので、分解整備など大掛かりで高度な整備も艦内で行えるようになっている。

その他の用途

DDHはヘリ空母としてだけでなく、次のような幅広い用途に使われるこを想定していて実績もある。

艦内には格納庫に次ぐ広さの多目的区画があり、有事になると指揮所に使用される。災害時には、警察、消防、自治体関係者などが集まり、効率的な災害対策拠点と期待される。東日本大震災(2011年)の時に「ひゅうが」は指揮所や会議室に使われている。なお、この時、物資輸送・入浴支援・ヘリによる支援活動など行っている。

フィリピンが台風(2013年11月)により甚大な被害を受けた時には、ひゅうが型の「いせ」は洋上拠点として米海兵隊のオスプレイー(MV-22)を発着艦させている。なお、日米共同訓練により、いずも型及びひゅうが型でのオスプレー運用が物理的に何ら支障もないことは、証明済である。

格納スペースの広さから輸送艦としての用途がある。熊本大震災(2016年)の時には、「いずも」は災害派遣として横須賀港を出港し、小樽港(北海道)で陸自の車両と隊員を搭載し、博多港(熊本県)へ入港し、車両及び隊員は陸路で活躍し、また、この時「ひゅうが」も支援活動を行っている。

医療施設も充実していて、有事の時は自艦や他艦の負傷者の治療を行えるのとはもちろんであるが、大規模災害時の救援活動も想定した施設となっている。艦外からの負傷者や病人の輸送には、搭載するヘリコプターを使用することを想定されているので、飛行甲板から初期治療を行う部屋までの通路はバリアフリーになっており、治療者をストレッチャーに載せたまま移動できる。

以下に、ひゅうが型といずも型の比較を、見た目サイズの違いよる運用能力及び兵装の観点から述べる。

ひゅうが型といずも型は共に全通甲板なので、外観は似たように見える。しかし、分かり易い見た目の違いとして次の点が挙げられる。

艦のサイズ
全長は、ひゅうが型は197mに対し、いずも型は248mと約50mの差があり、下図のように両艦を並べると一目瞭然である。

ヘリコプター発着艦スポット数
ひゅうが型は4カ所に対し、いずも型は5カ所であり、ひゅうが型が1カ所少ない。なお、全通甲板のメリットとしてスポット数が増え同時発着が可能になったことが挙げられるが、通常の対潜戦に於いてはスポット数が4カ所でも影響がないようである。

エレベーターの位置
第2エレベーターである艦尾側のエレベーターの位置に大きな違いがある。ひゅうが型では、艦首側の第1エレベーターと同様に甲板の中央を貫いているが、いずも型は右舷に張り出したサイドエレベーターとなっている。
サイドエレベーターを採用したことにより、次のメリットがある。
・ひゅうが型は第2格納庫と整備格納庫の間が第2エレベーターとなりエレベーターのスペースに駐機できないが、いずも型は第2格納庫と整備格納庫を遮る位置に第2エレベーターがないので、両格納庫の間に駐機できないスペースがなく広く使える。
・右舷に張り出しいるため、エレベーターサイズを食み出す航空機であっても、昇降が可能となる。

甲板に記載されている数字
ひゅうが型はDDH-181の「ひゅうが」とDDH-182の「いせ」の2隻があり、いずも型はDDH-183の「いずも」とDDH-184の「かが」の2隻がある。各艦の飛行甲板の艦首と艦尾側にDDHの後に続く3桁数字の下2桁が記載されている。
言い方を変えれば、竣工の古い順に81から昇順になっている。よって、「81」と「82」はひゅうが型で、「83」と「84」がいずも型である。なお、艦首側の側面には3桁数字が記載されている。

ひゅうが型といずも型の比較

いずも型はひゅうが型より一回り大きくなり、次の運用能力がアップした。

甲板が長くなり、ヘリ発着艦スポット数が1つ増え、5カ所に。
格納庫が大きくなり、ヘリ最大搭載機数3つ増え、14機に。
海上司令部としても利用される多目的区画が広く、かつ使い易くなり、艦隊旗艦としての能力が強化。
物資や車両等の積載容量が増大。
他の護衛艦艦に対する給油能力がアップ(護衛艦3隻分を有する)。

ひゅうが型といずも型は対潜水艦戦として同じであるが、21世紀前に策定されたひゅうが型の仕様と21世紀に入り策定されたいずも型の仕様には、運用構想に開きがある。
ひゅうが型以降のDDHは、砲や対艦ミサイルを装備しなくなった。しかし、それを除けばひゅうが型の固定武装は汎用護衛艦(DD)に引けを取らない程充実し、兵装は従来のDDHの延長上にある。一方いずも型の兵装は自艦の近接防衛用に限られ、他艦に守ってもらう立場となったが、その分、航空機運用能力、他艦補給能力などが強化された。

ひゅうが型の兵装には、いずも型にない次の兵装を備えている。

VLS(Vertical Launching System:ミサイル垂直発射システム)
VLSは保管容器と発射筒を兼ねる複数のセルで構成される。ミサイルは弾頭を上にして保管し、その状態から垂直方向に向けて発射され、空中で向きを変えて目標に向かう。1秒に1発程度で連射でき、個々の発射筒が独立しているので、1基が故障しても他の基には影響を及ぼさない。
ひゅうが型では、飛行甲板後部に16セルが設けられており、対潜ミサイルや近距離対空ミサイルの発射が可能である。

【VLS】
VLS(ひゅうが) VLSの垂直発射の瞬間(いせ)

※「ひゅうが」にて

※ひゅうが型の「いせ」による垂直発射の瞬間

3連装短魚雷発射管
艦艇から魚雷を発射させる対潜用装置である。

【3連装短魚雷発射管】
3連装短魚雷発射管(ひゅうが型)

※「ひゅうが」にて

※魚雷発射の様子

QQQ-21ソナー
艦首下部に装備され、遠距離の潜水艦だけでなく、近距離の小さな目標(機雷や潜水艇)への捜索探知能力も優れている。

一方、いずも型は自ら攻撃する兵装を備えていなく、次の自艦を守るための近接防御システムを備えているにすぎない。

SeaRAM近接防衛システム
超音速対艦ミサイル防衛用である。射程距離は、400m~16kmである。
いずも型で、初めて装備さらたもので、2基装備されている。

【SeaRAM】
SeaRAM(護衛艦「かが」)

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

※ミサイル発射の様子

ファランクス近接防衛システム(CIWS)
CIWS(Close In Weapon System:シウス、シーウス)は艦艇に接近する対艦ミサイルや航空機を迎撃する最後の防衛手段となる。20mm機関砲が6砲身装備されており、発射速度は毎分3,000~4,500発である。脅威が迫ってくると全自動で射撃が行われる。有効射程距離は1.5km程度である。
いずも型は、ひゅうが型と同様に2基(艦首と艦尾に1基ずつ)装備されている。

【CIWS】
CIWS(護衛艦「かが」)

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

※射撃の様子

魚雷防御システム
魚雷の防御用であり、いずも型のみ1式装備されている。

世界情勢の変化に伴いDDHの運用面に於いて、これまで現実的にはハードルが高いと思っていた以下の変貌が起きている。

DDHの長期遠方航海

中国は管轄権を主張している九段線※2内の南沙諸島や西沙諸島で岩礁を埋め立て、空港を建設するなどして軍事拠点化を進めている。この海域は中東・ヨーロッパと東アジアとを結ぶ重要な航路上に位置するため、一国がここの管轄権を主張することは、周辺国だけでなく日本にとっても安全保障上の重大問題である。
そのため日本政府は中国の身勝手な実行支配を打破するために「自由で開かれたインド太平洋作戦」を掲げている。また、米国は九段線内に於いて、「運行の自由作戦」として米海軍艦艇を通行させる行為を実行し、現在では英国、フランスも同調し艦艇を派遣している。
このような状況の中、近年、海上自衛隊はDDHなどの護衛艦を日本から遠く離れた南シナ海近辺へ派遣し、他国と共に共同訓練等を行い、中国をけん制する新たな任務を遂行している。

2017年、DDH-183「いずも」とDD-113「さざなみ」は、東南アジア諸国を巡る長期航海を行っている。南シナ海に面する各国海軍との共同訓練を行なったり、各国の若手海軍士官を護衛艦で乗艦実習をさせたりしている。
この航海で中国の人工島がある南沙諸島に近づくも折返ししている。

【いずも】 【さざなみ】
DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の前方上空から DD-113「さざなみ」(護衛艦「たかなみ」型)の側面

2018年、DDH-184「かが」、DD-105「いなづま」及びDD-117「すずつき」は、「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練」を行っている。3隻は米海軍空母「ロナルド・レーガン」などと訓練をしつつ南下し、東南アジア(フィリピン、インドネシア及びシンガポール)だけでなく、途中「すずつき」は帰国するも「かが」と「いなづま」はインド洋へも向かいスリランカとインドに寄港し、訪問国、米国及び英国と共同訓練をしている。
この航海では護衛艦が南シナ海に入るや否や中国軍艦が現れ、「かが」を数日間に渡り追跡している。「かが」は追跡された状態で、哨戒ヘリを飛ばし、ソナーによる敵潜水艦を捜索する訓練を行っている。
その一方で、中国を過度に刺激しないように、敢えて南沙諸島周辺を迂回するルートを取っている。

【かが】 【いなづま】 【すずつき】
DDH-184「かが」(護衛艦いずも型)の側面前方から DD-105「いなづま」(護衛艦むらさめ型)の側面 DD-117「すずつき」(護衛艦あきづき型)の側面前方から

現状の日本は「航行の自由作戦」を支持しているが、参加していない。しかし、米国の軍事専門家には、米国の同盟国である以上、いずれ日本も「航行の自由作戦」に参加することになり、中国と軍艦どうしの局所的な争いが起こり得るとみている人もいる。

※2 九段線(Nine-dash Line:「赤い舌」とも言う)
九段線とは、中国が南シナ海に於いて、自国の管轄権が及ぶ範囲を地図上に9つの破線で示したもの。これは中国が勝手に引いたもので周辺国を納得させる根拠がない。2013年、フィリピンは国際仲裁裁判所へ提訴し、九段線の歴史的権利を主張する法的根拠はないとの判決が出ているが、中国は無視している。

九段線

空母化

「防衛計画の大綱」は日本の安全政策の指針となるもであるが、通常は10年毎に見直すところを、安倍政権は5年で改定した(2018年12月に閣議決定)。そこでは、現有の艦艇からSTOVL(Short TakeOff/Vertical Landing:短距離離陸/垂直着陸)機の運用を可能にするための措置を講ずることが盛り込まれた。この大綱に従い「中期防衛力整備計画」(2019年度~2013年度)では、「STOVL機の運用が可能になるように、いずも型の改修を行う。」と具体的に示している。更に、昨年12月の閣議決定では、F-35の調達を大幅に増やし(42機から147機に)、増加分の42機がSTOVLのF-35Bとなっている。
つまり、いずも型DDHがF-35Bを搭載し運用できるように改修することになった。

2017年7月にいずも型の「かが」が金沢港(石川県)に寄港した時に乗艦したが、物理的に多少の改修が必要になるにしてもF-35Bを搭載できるなと感じ取った。しかし、戦後、憲法9条に基づき「専守防衛」を掲げ「攻撃型空母」は保有できないとしていた日本政府が僅か1年余りでF-35B搭載を決定することになるとは思いもよらなかった。

次に、空母化に改修する上で問題になりそうなところを挙げ所見を述べる。

物理的なサイズ
F-35Bのサイズは、全長15.6m×全幅10.7m×全高4.4mである。
一方、格納庫のサイズは長さ125m×幅21m×高さ7.2mであり、第1エレベーターは長さ20m×幅13mであり、十分収まるサイズである。また、第2エレ―ベータ―は長さ15m×幅14mでありエレベーターの床内に収まらないが、第2エレベーターは右舷に張り出しいるため、F-35Bの尾部部分を食み出すように乗せれば昇降が可能である。
F-35Bの搭載運用に於いて、現状のままで物理的なサイズに問題はない。

甲板の耐熱性
F-35Bは垂直に着艦するため、着艦時の排気ノズルは下に向けられ、高温の排気が飛行甲板に吹付けられることになる。そのため甲板が傷まないように、耐熱処理を施す必要がある。

発艦のための滑走路
F-35BはSTOVL(短距離離陸/垂直着陸)機と言われているが、垂直離着陸(VTOL:Vertical TakeOff and Landing)、つまり滑走路を使わずに垂直に離陸するこができる。となると、上記で述べたように甲板を耐熱処理するのであれば、甲板から垂直に発艦すれば良いではないかと思ってしまう。しかし、垂直離陸を行うと積載量に制限を受けたり、大量の燃料を消費することから、DDHでの運用に於いても短距離離陸が前提になっていると思われる。

英国の空母「クイーン・エルザべス」(全長284.0m×全幅73mで、いづも型より大きい。)は甲板にスキージャンプ台を付けF-35Bを運用している。スキ―ジャンプ台がなくてもSTOVL機を発艦可能であるが、スキージャンプ台を利用すれば積載量や燃料消費の面で有利になるメリットがある。

【クイーン・エルザべスとF-35B】
空母「クイーン・エルザべス」

※スキージャンプ台から発艦するF-35B

一方、米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」(全長257.3m×全幅42.7mといずも型に近いサイズ)は甲板にスキージャンプ台がなく平面の甲板かつカタパルト(航空機が短い滑走で離陸できるように、航空機外部から力を加えて加速させる装置)なしで、F-35Bを運用している。なお、次の動画を見ると、発艦時の滑走に100m強しか要していない。

【ワスプとF-35B】
強襲揚陸艦「ワスプ」

※発着艦するF-35B

「ワスプ」の動画を見る限り、いずも型甲板の長さはF-35Bの滑走に必要な長さを確保できていると判断でき、スキージャンプ台にはメリットがあるにせよ、スキージャンプ台のような大掛かりな改修を敢えて行う必要がないように思う。
F-35Bの滑走路として、甲板左端のヘリコプター発着艦スポットを避け甲板中央を使えればベストと思うが、現状そこには第1エレベーターがあるので、発着艦スポット上を使うしかないのかもしれない。

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2019年3月21日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

護衛艦「かが」を見学

現在、港フェスタ金沢2017のイベントの一環として、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「かが」が、石川県の金沢港に寄港している。7月14日から4日間停泊する予定で、15日が唯一、一般人が乗艦可能な日であったので、その日、乗艦するため朝早くに出かけた。

混み合う駐車場

乗艦希望者が多く集まることが予想されていたので(海上自衛隊発表の実際の見学者数は、15,052人)、埠頭近辺の臨時駐車場には駐車できないだろうと判断し、最初から埠頭から離れた4箇所の駐車場(シャトルバス運行)の1つに向かった。乗艦開始予定時刻の45分前に目的の駐車場に着いたものの、駐車場の入口にいた警備員が、満車の紙を掲げている状態だった。
別の駐車場に向かう前に、警備員に声を掛けてみたところ、以外にも「埠頭の臨時駐車場がまだ空いている。」との情報を得て、結局最も駐車困難と思っていた埠頭の臨時駐車場に駐車することができた。私のように最初から埠頭の臨時駐車場を敬遠した見学者が多くいたようだ。

埠頭臨時駐車場に着いた時点で、乗艦希望者の長い行列がこの駐車場に接する道路まで伸びていた。列に並んでいると、離れた駐車場から歩いて来た人の話声が聞こえ、「シャトルバスが混んでいて、多くはバスに乗らず歩いている。」とのことだった。

護衛艦「かが」の解説

艦名の「かが」は、日本の令制国(旧国)の中で最後に独立した「加賀国」(かがのくに:誕生は平安時代で、エリアは現在の石川県の南側半分)に由来している。 加賀国が由来している艦艇は、護衛艦「かが」以外にも、かつて旧海軍の空母「加賀」※1が存在していたので、艦艇としては2代目となる。

護衛艦「かが」は、2015年8月に進水し、2017年3月から就役している海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH:ヘリコプター護衛艦を意味する記号)であり、いずも型護衛艦※2の2番艦である。また、海上自衛隊のヘリ空母(空母のような広い甲板を持つ海自の護衛艦)は、ひゅうが型の「ひゅうが」と「いせ」、いずも型の「いづも」と当「かが」で、4艦となる。

護衛艦「かが」のスペック等は次のとおり。
・基本排出量:19,500トン
・全長:248.0m
・全幅:38.0m
・速力:30ノット
・搭載機:哨戒及び輸送ヘリコプター最大14機、
・備考:最大5機のヘリコプターが同時離着陸が可能で、またオスプレイの離着陸も可能

※1 空母「加賀」
空母「加賀」は、元々戦艦「加賀」として建造された(1921年[大正10年]進水)。しかし、米国が提唱したワシントン会議(1921年[大正10年]~1922年)でワシントン海軍軍縮条約が採択され、最終的には主力艦の総排水量比率が、米と英:日:仏と伊=5:3:1.67に制限されたことにより、戦艦「加賀」の廃艦が決定される。
その一方で、空母を重要視していた日本海軍は、戦艦「天城」を空母に改造していたが、関東大震災(1923年[大正12年])の損害より改造不可能となり、その代艦として空母「加賀」が誕生することになる。
なお、ワシントン会議の米国の目的は、米国・英国・日本の軍艦建造競争を終わらせ、自国の財政負担を軽減する以外にも、東アジアに於ける日本の膨張を抑えることにあった。一方、日本が条約を受け入れた理由の1つは、日本も軍事費が重い負担になっていたからで、条約前の軍事費が国家歳出の約5割であった。

真珠湾攻撃(1941年[昭和16年])にも参加し、ミッドウェー海戦(1942年[昭和17年])で米軍の艦上爆撃機による急降下爆撃が原因で、大爆発し沈没した。1999年(平成11年)に米国の深海調査会社ノースティコスが沈没した「加賀」をミッドウェー島沖合の深海5,200mで発見している。
なお、空母「加賀」も1930年(昭和5年)から何度か石川県の金石沖に来ている(船体が大き過ぎて金石港で停泊できず)。

・基本排出量:26,900トン
・全長:238.51m
・全幅:31.67m
・速力:約27ノット
・搭載機:戦闘機16機、偵察機16機、攻撃機28機

【戦艦から空母に改造中】
「加賀」の戦艦から空母に改造中
【船体側面】
空母「加賀」の側面
【大炎上(イメージ画像)】
空母「加賀」の大炎上(イメージ画像)
【海底に沈む空母「加賀」の残骸】
海底に沈む空母「加賀」の残骸

※2いずも型護衛艦
海上自衛隊が運用するヘリコプター搭載護衛艦に於いて、先行して配備されているひゅうが型を基に大型化し、多用途性及び航空運用機能を強化したものである。
ひゅうが型は単艦での戦闘能力を持っているが、いずも型は艦自体の戦闘能力は低く抑え、ヘリコプター運用に重点を置いている。単艦では運用せず、護衛艦(e.g. イージス艦)を伴った艦隊としての運用を前提としている。

見学の感想

◎金沢港のイベントに参加するのは今回が初めてだったので駐車場の混み具合が良く分からず向かったが、今後金沢港で催されるイベントに参加することがあれば、今回の経験が大いに参考になると感じた。
◎これまで見た船で一番大きかったのは、学生時代に海外へ旅立つ友達を横浜港で見送った時の船だった。今回、駐車場を出ると停泊中の馬鹿でかい「かが」が否応なしに目に止まり、学生の時に見た船とは比べものにならない圧倒的な存在感があった。
◎格納庫と甲板を繋ぐエレベーターはビルのフロアー丸ごと動く感じで、振動が殆どなく、スムーズな動作で一度に多くの見学者を運んでいる姿に感動した。エレベーターに配置されていた自衛官は、重量制限を気にする気配もなく、エレベーターに乗りたい人がいればお構いなしに乗せていたが、一般のエレベーターのように重量オーバーのブザーが鳴ることはなかった。エレベーターのスペックを調べていないが、これならVTOL(垂直離着陸)可能なF-35B※3(全長15.61m、全幅10.67m、空虚重量14.5t、最大離陸重量27t)を載せても、物理的に何の問題ないように思えた。

※3 F-35
F-35は、レーダで捉え難いステルス性に優れた最新鋭戦闘機(第5世代戦闘機)である。離着陸方法等の違いから次の3種類に分類される。

・F-35A(米空軍向け)
通常離着陸(CTOL:Conventional TakeOff and Landing:シートール)型であり、長い滑走路を持った陸用基地で運用。
ちなみに、航空自衛隊が導入したF-35は、このA型である。

・F-35B(海兵隊向け)
短距離離陸垂直着陸(STOVL:Short TakeOff/Vertical Landing:ストーヴル)型であり、滑走路のない陸上からでも、あるいはカタパルト(航空機が短い滑走で離陸できるように、航空機外部から力を加えて加速させる装置)を持たない狭い甲板からでも運用可能。

ちなみに、F-35Bは垂直離着も可能であり、垂直離着陸(VTOL:Vertical TakeOff and Landing:ヴィトール)型とも言える。ただ、垂直離陸を行うと大量の燃料を消費すること等から、通常は離陸時に短距離の滑走を行い着陸時に垂直着陸を行っている。このように一般的には、STOVL型とVTOL型の異なる機種が存在するのでなく、VTOL型が運用面に於いて離陸時に短距離の滑走を行っているにすぎない。

・F-35C(米海軍向け)
カタパルトを備えた正規空母でしか運用できない。着艦速度をおとすために翼面積を増やし、強制着艦の衝撃に耐える強度を持たせた設計。

護衛艦「かが」の画像

【外観】
全貌(護衛艦「かが」)
側面(護衛艦「かが」)

【格納庫】
格納庫(

【甲板と格納庫を繋ぐエレベーター】
エレベーター下降開始前(
エレベーター下降開始(
エレベーター下降中(
エレベーター下降終了(
エレベーター上昇後の格納庫状態(

【甲板】
甲板(

【艦橋】
艦橋(

【哨戒ヘリコプター】
哨戒ヘリ(

【SeaRAM近接防衛システム】(超音速対艦ミサイル防衛のために使用)
SeaRAM(

【ファランクス近接防衛システム】
(巡行ミサイルや航空機からの攻撃に対する最後の防衛手段として使用)
ファランクス(

【旭日旗】
旭日旗(

【見学者の行列】
行列(

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2017年7月17日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

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