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脚光を浴びているヘリコプター搭載護衛艦(DDH)

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は、昨年(2018年)に於いて空母化の閣議決定や南シナ海・インド洋への派遣訓練など、何かと脚光を浴びていることからDDHについて解説する。
まずは「護衛艦とは」どう言う艦艇なのかを述べた上で、「DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の詳細」について述べて行く。

護衛艦と言うと船団等を護衛するイメージを持つが、海上自衛隊の「護衛艦」とは他国の「駆逐艦」に相当する。建前上、自衛隊は軍隊でないので、軍艦である駆逐艦と名乗らず護衛艦と名乗っているに過ぎない。現在の駆逐艦は、対潜、対空、対艦と幅広い能力を持ち、任務は多様化している。

海上自衛隊が保有する現役の護衛艦は、以下の4種類に分類される。

汎用護衛艦

汎用護衛艦(DD:「D」はDestroyerの頭文字であるが、アメリカ海軍がタイプライターで打った時に、1文字だけでは見ずらいとの理由等により同じ文字を2回打ったことから重ねて表記)で、多用途戦闘艦である。なお、海外で「Destroyer」と言えば、駆逐艦のことである。

DD-119 「あさひ」(護衛艦「あさひ」型)

DD-119 「あさひ」(護衛艦あさひ型)
・基準排水量:5,100t
・長さ×幅:151m×18,3m
・哨戒ヘリコプター1機を搭載。

ミサイル護衛艦

他の護衛艦もミサイルを搭載しているが、ミサイル護衛艦(DDG:「G」はGuided Missileの頭文字)は艦隊防空用の特に優れた対空ミサイルを搭載している。
1990年代以降に就役したDDG(こんごう型及び、あたご型 )はイージスシステムを搭載してる。

DDG-177「あたご」(護衛艦あたご型)

DDG-177「あたご」(護衛艦あたご型)
・基準排水量:7,750t
・長さ×幅:165m×21m
・哨戒ヘリコプター1機を搭載(常時搭載機なし)。

ヘリコプター搭載護衛艦

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH:「H」はHelicopterの頭文字)は、他の護衛艦と違い、複数の哨戒ヘリコプターを搭載できる。
現役のDDHは、どれも全通甲板であり複数機連続発着が可能となった。

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の後方上空から

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)
・基準排水量:19,950t
・長さ×幅:248m×38m
・哨戒ヘリコプター7機、救難・輸送ヘリコプター2機

近海警備用護衛艦

近海警備用護衛艦(DE:「E]は Escortの頭文字)は「小型護衛艦」とも言われ、汎用護衛艦をコンパククト化し、多様な任務への対応能力の向上を目的としたものである。各地方隊で運用され、おもに沿海域で任務している。

DE-229「あぶくま」(護衛艦あぶくま」型

DE-229「あぶくま」(護衛艦あぶくま型)
・基準排水量:2,000t
・長さ×幅:109m×13.4m

海上自衛隊が保有するDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)は、搭載するヘリコプターを運用するだけでなく、さまざまな役割を担うための能力を持っている。
現役のDDHは4隻であり、その全てがヘリコプターを発着艦させるための甲板が艦全体を覆う全通甲板を採用し、また艦橋(高所に設けられた指揮所)も艦尾から艦首に向かって右端にあるため、ヘリコプターを甲板に並べて駐機できる。見た目は航空空母そのものであり、「ヘリ空母」とも言われている。
以下、DDHの詳細について、「DDHの分類」、「DDHの用途」、「ひゅうが型といずも型の比較」及び「運用面での変貌」の観点から解説する。

現役DDHは、2つの型があり、各型毎に2隻が存在し、全体として4隻である。
型名、そのスペック及び各艦名は以下のとおりである。

ひゅうが型

・基準排水量:13,950t
・主要寸法:長さ 197m、幅 33m、深さ 22m、喫水 7m
・馬力:100,000PS
・速力:30kt ※1
・乗員:約380人
・ヘリ:哨戒ヘリ×3機、掃海輸送へり×1機(最大搭載機数11機)
・備考:それまでのDDHと比べた特徴は、全通甲板になり、同時に複数のヘリを発着艦できる性能を持つことになる。

【DDHー181「ひゅうが」(2009年3月18日竣工)】

DDH-181「ひゅうが」(護衛艦ひゅうが型)

【DDHー182「いせ」(2011年3月16日竣工)】

DDH-182「いせ」(護衛艦ひゅうが型)

いずも型

・基準排水量:19,950t
・主要寸法:長さ 248m、幅 38m、深さ 23.5m、喫水 7.1m
・馬力:112,000PS
・速力:30kt ※1
・乗員:約470人
・ヘリ:哨戒ヘリ×7機、輸送・救難ヘリ×2機(最大搭載機数14機)
・備考:全通甲板

【DDHー183「いずも」(2015年3月25日竣工)】

DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の側面

【DDHー184「かが」(2017年3月22日竣工)】

DDH-184「かが」(護衛艦いずも型)の前方上空から

※1 kt
ノット(knot)の記号。1時間に1海里(1.852km)進む速さの単位であり、1ktは時速1.852kmである。例えば30ktとは時速55.56kmのことである。

DDHは「ヘリ空母」とも言われるように、哨戒ヘリコプターによる対潜作戦として働くことを目的にしているが、それ以外にも幅広い任務に対応する多用途性を持ち合わせている。DDHの用途として、以下のものが挙げられる。

対潜水艦

潜水艦は海軍兵器の中で手強い存在であるが、潜水艦の天敵となるのが哨戒ヘリコプターであり、その哨戒ヘリコプターを搭載するのがDDHである。現役DDHはどれも全通甲板であることから、複数の発着艦スポットが確保されヘリコプターを同時に発着艦可能となり、更に甲板全体に万遍なく、機体を拘束するための係留環が設置されているので、発着艦スポット以外の場所でも駐機できる。

【発着艦スポットに駐機しているヘリ】 【無数の係留環】
発着艦スポットに駐機しているヘリ 甲板上の無数の係留環

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

敵の潜水艦を探知し追尾するには、哨戒ヘリコプターからソナー(音波によって物体を探知する装置)を連続して海面へ投下したり、ディッピング・ソナー(吊下式ソナー)を吊るして長時間ホバリングするなどの作業を連続させる必要があり、そのために哨戒ヘリコプターを交代させながら連続して飛行しなければならない。更に攻撃には、魚雷(弾頭を付け水中を航行し、目標物を破壊する兵器)や爆雷(水中の一定の深さに達すると爆発する兵器)を搭載する別の哨戒ヘリコプターが投入される。
このような連続した対潜水艦戦を行うには、哨戒ヘリコプターの同時発着・同時運用が可能となっている必要がある。

【ホバリングする哨戒ヘリ】 【ソナーを降ろす哨戒ヘリ】
ホバリングする哨戒ヘリ ソナーを降ろす哨戒ヘリ

※中国軍艦が監視する中、南シナ海で訓練する哨戒ヘリ(2018年)。バックの艦艇は「かが」。

【ディッピング・ソナー】 【投下される魚雷】
ディッピング・ソナー ヘリから投下される魚雷

※「かが」が金沢港に寄港した時(2017年)に初めて実物を間近で見たが、こんなに大きいものだと思っていなかった(ソナーの上部一部しか写っておらず)。

また、同時に複数のヘリコプターを発着艦させるために、艦橋構造物の艦尾側には甲板全体を見渡せる航空管制室(空港の管制塔に相当)が設けられているのも、他の護衛艦にない特徴である。

【航空管制室】
航空管制室 航空管制室(第2エレベーター上から撮影)

※窓が並んでいるところが航空管制室である。右側写真は第2エレベーター上から撮影。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

ヘリの格納と整備

全通看板の直下は広い格納庫になっており、艦首側と艦尾側に備えられている2基のエレベータにより格納庫と飛行甲板を繋いでいる。

【格納庫】
格納庫(艦首側から艦尾側を撮影) 格納庫(手前が第1エレベーターで奥が車両格納庫)

※左写真は艦首側から艦尾側を撮影。右写真は手前が第1エレベーターのスペースで、奥(艦首方向)が車両格納庫であり、天井(格子状の黒っぽい物体)がエレベーターの床裏面で、飛行甲板へ向かって上昇中。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

【第1エレベーター】 【第2エレベーター】
第1エレベーター 第2エレベーター

※左写真の第1エレベーターは格納庫に降りた状態。右写真の第2エレベーターは飛行甲板に昇った状態。金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)。

格納庫の区分けは、艦首側から次のとおりになっている。
支援車両(牽引車、清掃車、フォークリフトなど)を格納する車両格納庫、艦首側の第1エレベーター、ヘリを格納する航空機第1格納庫、航空機第2格納庫、(ひゅうが型は、艦尾側の第2エレベーター)、整備を行う整備格納庫となる。これらの区分けはエレベーター以外に物理的に遮るものがないので、状況により併用も可能である。
なお、第1と第2航空機格納庫は、扉で物理的に区切るこができ、火災時の延焼を食い止める役割を持つ。

格納庫は最大搭載機数(ひゅうが型:11機、いずも型:14機)の全てを格納でき、それでもヘリコプターの移動や入替えが行えるスペースも確保できる。また、ヘリの整備・点検作業を行うための広いスペースが確保されているので、分解整備など大掛かりで高度な整備も艦内で行えるようになっている。

その他の用途

DDHはヘリ空母としてだけでなく、次のような幅広い用途に使われるこを想定していて実績もある。

艦内には格納庫に次ぐ広さの多目的区画があり、有事になると指揮所に使用される。災害時には、警察、消防、自治体関係者などが集まり、効率的な災害対策拠点と期待される。東日本大震災(2011年)の時に「ひゅうが」は指揮所や会議室に使われている。なお、この時、物資輸送・入浴支援・ヘリによる支援活動など行っている。

フィリピンが台風(2013年11月)により甚大な被害を受けた時には、ひゅうが型の「いせ」は洋上拠点として米海兵隊のオスプレイー(MV-22)を発着艦させている。なお、日米共同訓練により、いずも型及びひゅうが型でのオスプレー運用が物理的に何ら支障もないことは、証明済である。

格納スペースの広さから輸送艦としての用途がある。熊本大震災(2016年)の時には、「いずも」は災害派遣として横須賀港を出港し、小樽港(北海道)で陸自の車両と隊員を搭載し、博多港(熊本県)へ入港し、車両及び隊員は陸路で活躍し、また、この時「ひゅうが」も支援活動を行っている。

医療施設も充実していて、有事の時は自艦や他艦の負傷者の治療を行えるのとはもちろんであるが、大規模災害時の救援活動も想定した施設となっている。艦外からの負傷者や病人の輸送には、搭載するヘリコプターを使用することを想定されているので、飛行甲板から初期治療を行う部屋までの通路はバリアフリーになっており、治療者をストレッチャーに載せたまま移動できる。

以下に、ひゅうが型といずも型の比較を、見た目サイズの違いよる運用能力及び兵装の観点から述べる。

ひゅうが型といずも型は共に全通甲板なので、外観は似たように見える。しかし、分かり易い見た目の違いとして次の点が挙げられる。

艦のサイズ
全長は、ひゅうが型は197mに対し、いずも型は248mと約50mの差があり、下図のように両艦を並べると一目瞭然である。

ヘリコプター発着艦スポット数
ひゅうが型は4カ所に対し、いずも型は5カ所であり、ひゅうが型が1カ所少ない。なお、全通甲板のメリットとしてスポット数が増え同時発着が可能になったことが挙げられるが、通常の対潜戦に於いてはスポット数が4カ所でも影響がないようである。

エレベーターの位置
第2エレベーターである艦尾側のエレベーターの位置に大きな違いがある。ひゅうが型では、艦首側の第1エレベーターと同様に甲板の中央を貫いているが、いずも型は右舷に張り出したサイドエレベーターとなっている。
サイドエレベーターを採用したことにより、次のメリットがある。
・ひゅうが型は第2格納庫と整備格納庫の間が第2エレベーターとなりエレベーターのスペースに駐機できないが、いずも型は第2格納庫と整備格納庫を遮る位置に第2エレベーターがないので、両格納庫の間に駐機できないスペースがなく広く使える。
・右舷に張り出しいるため、エレベーターサイズを食み出す航空機であっても、昇降が可能となる。

甲板に記載されている数字
ひゅうが型はDDH-181の「ひゅうが」とDDH-182の「いせ」の2隻があり、いずも型はDDH-183の「いずも」とDDH-184の「かが」の2隻がある。各艦の飛行甲板の艦首と艦尾側にDDHの後に続く3桁数字の下2桁が記載されている。
言い方を変えれば、竣工の古い順に81から昇順になっている。よって、「81」と「82」はひゅうが型で、「83」と「84」がいずも型である。なお、艦首側の側面には3桁数字が記載されている。

ひゅうが型といずも型の比較

いずも型はひゅうが型より一回り大きくなり、次の運用能力がアップした。

甲板が長くなり、ヘリ発着艦スポット数が1つ増え、5カ所に。
格納庫が大きくなり、ヘリ最大搭載機数3つ増え、14機に。
海上司令部としても利用される多目的区画が広く、かつ使い易くなり、艦隊旗艦としての能力が強化。
物資や車両等の積載容量が増大。
他の護衛艦艦に対する給油能力がアップ(護衛艦3隻分を有する)。

ひゅうが型といずも型は対潜水艦戦として同じであるが、21世紀前に策定されたひゅうが型の仕様と21世紀に入り策定されたいずも型の仕様には、運用構想に開きがある。
ひゅうが型以降のDDHは、砲や対艦ミサイルを装備しなくなった。しかし、それを除けばひゅうが型の固定武装は汎用護衛艦(DD)に引けを取らない程充実し、兵装は従来のDDHの延長上にある。一方いずも型の兵装は自艦の近接防衛用に限られ、他艦に守ってもらう立場となったが、その分、航空機運用能力、他艦補給能力などが強化された。

ひゅうが型の兵装には、いずも型にない次の兵装を備えている。

VLS(Vertical Launching System:ミサイル垂直発射システム)
VLSは保管容器と発射筒を兼ねる複数のセルで構成される。ミサイルは弾頭を上にして保管し、その状態から垂直方向に向けて発射され、空中で向きを変えて目標に向かう。1秒に1発程度で連射でき、個々の発射筒が独立しているので、1基が故障しても他の基には影響を及ぼさない。
ひゅうが型では、飛行甲板後部に16セルが設けられており、対潜ミサイルや近距離対空ミサイルの発射が可能である。

【VLS】
VLS(ひゅうが) VLSの垂直発射の瞬間(いせ)

※「ひゅうが」にて

※ひゅうが型の「いせ」による垂直発射の瞬間

3連装短魚雷発射管
艦艇から魚雷を発射させる対潜用装置である。

【3連装短魚雷発射管】
3連装短魚雷発射管(ひゅうが型)

※「ひゅうが」にて

※魚雷発射の様子

QQQ-21ソナー
艦首下部に装備され、遠距離の潜水艦だけでなく、近距離の小さな目標(機雷や潜水艇)への捜索探知能力も優れている。

一方、いずも型は自ら攻撃する兵装を備えていなく、次の自艦を守るための近接防御システムを備えているにすぎない。

SeaRAM近接防衛システム
超音速対艦ミサイル防衛用である。射程距離は、400m~16kmである。
いずも型で、初めて装備さらたもので、2基装備されている。

【SeaRAM】
SeaRAM(護衛艦「かが」)

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

※ミサイル発射の様子

ファランクス近接防衛システム(CIWS)
CIWS(Close In Weapon System:シウス、シーウス)は艦艇に接近する対艦ミサイルや航空機を迎撃する最後の防衛手段となる。20mm機関砲が6砲身装備されており、発射速度は毎分3,000~4,500発である。脅威が迫ってくると全自動で射撃が行われる。有効射程距離は1.5km程度である。
いずも型は、ひゅうが型と同様に2基(艦首と艦尾に1基ずつ)装備されている。

【CIWS】
CIWS(護衛艦「かが」)

※金沢港に寄港した「かが」にて(2017年)

※射撃の様子

魚雷防御システム
魚雷の防御用であり、いずも型のみ1式装備されている。

世界情勢の変化に伴いDDHの運用面に於いて、これまで現実的にはハードルが高いと思っていた以下の変貌が起きている。

DDHの長期遠方航海

中国は管轄権を主張している九段線※2内の南沙諸島や西沙諸島で岩礁を埋め立て、空港を建設するなどして軍事拠点化を進めている。この海域は中東・ヨーロッパと東アジアとを結ぶ重要な航路上に位置するため、一国がここの管轄権を主張することは、周辺国だけでなく日本にとっても安全保障上の重大問題である。
そのため日本政府は中国の身勝手な実行支配を打破するために「自由で開かれたインド太平洋作戦」を掲げている。また、米国は九段線内に於いて、「運行の自由作戦」として米海軍艦艇を通行させる行為を実行し、現在では英国、フランスも同調し艦艇を派遣している。
このような状況の中、近年、海上自衛隊はDDHなどの護衛艦を日本から遠く離れた南シナ海近辺へ派遣し、他国と共に共同訓練等を行い、中国をけん制する新たな任務を遂行している。

2017年、DDH-183「いずも」とDD-113「さざなみ」は、東南アジア諸国を巡る長期航海を行っている。南シナ海に面する各国海軍との共同訓練を行なったり、各国の若手海軍士官を護衛艦で乗艦実習をさせたりしている。
この航海で中国の人工島がある南沙諸島に近づくも折返ししている。

【いずも】 【さざなみ】
DDH-183「いずも」(護衛艦いずも型)の前方上空から DD-113「さざなみ」(護衛艦「たかなみ」型)の側面

2018年、DDH-184「かが」、DD-105「いなづま」及びDD-117「すずつき」は、「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練」を行っている。3隻は米海軍空母「ロナルド・レーガン」などと訓練をしつつ南下し、東南アジア(フィリピン、インドネシア及びシンガポール)だけでなく、途中「すずつき」は帰国するも「かが」と「いなづま」はインド洋へも向かいスリランカとインドに寄港し、訪問国、米国及び英国と共同訓練をしている。
この航海では護衛艦が南シナ海に入るや否や中国軍艦が現れ、「かが」を数日間に渡り追跡している。「かが」は追跡された状態で、哨戒ヘリを飛ばし、ソナーによる敵潜水艦を捜索する訓練を行っている。
その一方で、中国を過度に刺激しないように、敢えて南沙諸島周辺を迂回するルートを取っている。

【かが】 【いなづま】 【すずつき】
DDH-184「かが」(護衛艦いずも型)の側面前方から DD-105「いなづま」(護衛艦むらさめ型)の側面 DD-117「すずつき」(護衛艦あきづき型)の側面前方から

現状の日本は「航行の自由作戦」を支持しているが、参加していない。しかし、米国の軍事専門家には、米国の同盟国である以上、いずれ日本も「航行の自由作戦」に参加することになり、中国と軍艦どうしの局所的な争いが起こり得るとみている人もいる。

※2 九段線(Nine-dash Line:「赤い舌」とも言う)
九段線とは、中国が南シナ海に於いて、自国の管轄権が及ぶ範囲を地図上に9つの破線で示したもの。これは中国が勝手に引いたもので周辺国を納得させる根拠がない。2013年、フィリピンは国際仲裁裁判所へ提訴し、九段線の歴史的権利を主張する法的根拠はないとの判決が出ているが、中国は無視している。

九段線

空母化

「防衛計画の大綱」は日本の安全政策の指針となるもであるが、通常は10年毎に見直すところを、安倍政権は5年で改定した(2018年12月に閣議決定)。そこでは、現有の艦艇からSTOVL(Short TakeOff/Vertical Landing:短距離離陸/垂直着陸)機の運用を可能にするための措置を講ずることが盛り込まれた。この大綱に従い「中期防衛力整備計画」(2019年度~2013年度)では、「STOVL機の運用が可能になるように、いずも型の改修を行う。」と具体的に示している。更に、昨年12月の閣議決定では、F-35の調達を大幅に増やし(42機から147機に)、増加分の42機がSTOVLのF-35Bとなっている。
つまり、いずも型DDHがF-35Bを搭載し運用できるように改修することになった。

2017年7月にいずも型の「かが」が金沢港(石川県)に寄港した時に乗艦したが、物理的に多少の改修が必要になるにしてもF-35Bを搭載できるなと感じ取った。しかし、戦後、憲法9条に基づき「専守防衛」を掲げ「攻撃型空母」は保有できないとしていた日本政府が僅か1年余りでF-35B搭載を決定することになるとは思いもよらなかった。

次に、空母化に改修する上で問題になりそうなところを挙げ所見を述べる。

物理的なサイズ
F-35Bのサイズは、全長15.6m×全幅10.7m×全高4.4mである。
一方、格納庫のサイズは長さ125m×幅21m×高さ7.2mであり、第1エレベーターは長さ20m×幅13mであり、十分収まるサイズである。また、第2エレ―ベータ―は長さ15m×幅14mでありエレベーターの床内に収まらないが、第2エレベーターは右舷に張り出しいるため、F-35Bの尾部部分を食み出すように乗せれば昇降が可能である。
F-35Bの搭載運用に於いて、現状のままで物理的なサイズに問題はない。

甲板の耐熱性
F-35Bは垂直に着艦するため、着艦時の排気ノズルは下に向けられ、高温の排気が飛行甲板に吹付けられることになる。そのため甲板が傷まないように、耐熱処理を施す必要がある。

発艦のための滑走路
F-35BはSTOVL(短距離離陸/垂直着陸)機と言われているが、垂直離着陸(VTOL:Vertical TakeOff and Landing)、つまり滑走路を使わずに垂直に離陸するこができる。となると、上記で述べたように甲板を耐熱処理するのであれば、甲板から垂直に発艦すれば良いではないかと思ってしまう。しかし、垂直離陸を行うと積載量に制限を受けたり、大量の燃料を消費することから、DDHでの運用に於いても短距離離陸が前提になっていると思われる。

英国の空母「クイーン・エルザべス」(全長284.0m×全幅73mで、いづも型より大きい。)は甲板にスキージャンプ台を付けF-35Bを運用している。スキ―ジャンプ台がなくてもSTOVL機を発艦可能であるが、スキージャンプ台を利用すれば積載量や燃料消費の面で有利になるメリットがある。

【クイーン・エルザべスとF-35B】
空母「クイーン・エルザべス」

※スキージャンプ台から発艦するF-35B

一方、米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」(全長257.3m×全幅42.7mといずも型に近いサイズ)は甲板にスキージャンプ台がなく平面の甲板かつカタパルト(航空機が短い滑走で離陸できるように、航空機外部から力を加えて加速させる装置)なしで、F-35Bを運用している。なお、次の動画を見ると、発艦時の滑走に100m強しか要していない。

【ワスプとF-35B】
強襲揚陸艦「ワスプ」

※発着艦するF-35B

「ワスプ」の動画を見る限り、いずも型甲板の長さはF-35Bの滑走に必要な長さを確保できていると判断でき、スキージャンプ台にはメリットがあるにせよ、スキージャンプ台のような大掛かりな改修を敢えて行う必要がないように思う。
F-35Bの滑走路として、甲板左端のヘリコプター発着艦スポットを避け甲板中央を使えればベストと思うが、現状そこには第1エレベーターがあるので、発着艦スポット上を使うしかないのかもしれない。

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2019年3月21日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

超電導リニアの仕組み

超電導リニア(L0系)

超電導リニアの仕組みは、一般の鉄道と大きく異なるので興味が湧く。以下に、私が理解している範囲で仕組み等について解説する。

一般の鉄道の問題点

一般の鉄道は、2本のレール上に鉄製車輪が乗り、車輪が次のことを行なっている。
・支持:車体を下から支えている。
・案内:車体の進行方向を誘導する。
・推進:レールに沿って車体を走らす。

ただ、一般の鉄道には次の問題点がある。

推進

車輪が滑らず踏ん張って推進できるのは、レールと車輪の接触部分に摩擦があるからである。この接触部分に働く摩擦力のことを「粘着力」と言うが、車輪が転がりながらレールを蹴って進もうとする力が、粘着力を超えると、車輪が滑って空転する。また、空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなるため、ある速度まで上がると粘着駆動で前進する力と空気抵抗がつり合う状態になり、それ以上の速度を出せなくなり、車輪が空転する。つまり、高速走行に限界がある。
更に、粘着力は、雨が降るだけで大きく影響を受けるので、安定した推進力を得ることができない。

支持

車輪の幅はレールの幅にピッタリ噛み合っているのでなく、多少の隙間を持たせている。と言うのも、カーブを滑らかに曲がるためであるが、車輪の動きを不安定させる要因にもなり、蛇行動(車輪がある周期で左右に動く現象)の原因となる。蛇行動が発生すると、乗り心地が悪くなるだけでなく、場合によっては脱線に繋がる可能性もある。この蛇行動は高速走行に発生し易く、またレールと車輪が接触していることから高速走行になるほど騒音が大きくなる。

以上の問題は、鉄輪式から浮上式に替えれば解決する。

 鉄輪式の最高速度
一般の鉄道の限界速度は、昔は時速300kmと言われていた。しかし、技術が向上し、西暦2007年にTVG(車輪で支持するフランスの高速鉄道)が時速574km(営業速度:320km)を記録している。
右の動画は、TVGが574kmを出した時のもの。迫力のある映像で興味深いが、鉄輪式の車両だと思うと、恐怖が先に立ち体験乗車したい気持ちになれない。また、走行中の騒音も大きそうで、これも恐怖心を増幅させる。

リニアモーターとは

一般の電車は、回転式の電動モーターを使って車輪を回転させている。回転式モーターは、内側で回転するローター(回転子)と外側で固定されたステーター(固定子)で構成されている。ローターの回転に従ってステーターの磁場(=磁界)の向きを切り替えることにより、途切れなく内側のローター(磁石)が回転できる。
一方、リニアモーターは回転式モーターを直線状に引き延ばしたものである(リニア[linear]とはライン[line]の形容詞で「直線状の」を表す)。平らになったステーターに並べられている電磁石の極性を切り換える(磁場の向きを切り換える)ことで、回転式モーターの内側にあった磁石が途切れなく平らなステーターに沿って動くことができる。

超電導リニアでは、回転式モーターのローター(内側)部分が車両側面に搭載されている超電導磁石に相当し、回転式モーターのステーター(外側)部分が地上のガイドウェイ(断面が凹字状の案内走行路)側壁の推進コイルに相当する。

回転式モーター、リニアモーター、超電導リニアとガイドウェイの関係

ちなみに、リニアモーターカーとはリニアモーターにより駆動する鉄道車両のことであり、浮上するか否かは関係ない。従って、「推進」にリニアモーターを使用し、「案内」及び「支持」に従来の電車と同じレールと車輪を使用して走行する「鉄輪式リニア―モーターカー」もある。日本に於ける鉄輪式リニア―モーターカーは、次のメリットから地下鉄で運営されている。
・トンネル・車両の断面積の縮小した「ミニ地下鉄」が開発され、建設費を節減できる。
・都市の地下空間はケーブル・配管・別トンネル等で混雑しているため、トンネルの建設には勾配が発生し易いが、粘着力による推進でないので急勾配に強く、また従来の車両では構造上あまり急カーブを作ることができなかったが、急カーブにも対処できる。

超電導磁石を使う理由

超電導リニアは、磁石間の吸引力・反発力を利用して浮上するが、車両は重いので非常に強い磁場が必要になる。
永久磁石では車両を走行、浮上させるだけの磁場を発生させることができないので※1、電磁石※2を使って実現している。

電磁石は、流す電流を増やせば磁場は大きくなるが、通常の電磁石(常電導磁石※3)では導線に電気抵抗があるため、大きな電流を流すと発熱し、最終的には導線が燃えてしまう問題があるため、非常に強い磁場を発生させることができない。このことは、電気抵抗がない導線であれば、どれだけ大きな電流を流しても熱が発生することがないので、強い電磁石を作ることができることを意味する。

そこで、超電導リニアでは、電気抵抗ゼロの状態にしたコイルの電磁石(超電導磁石)で、強力な磁場を発生させている。
ある特定の物質を混ぜ合わせて作った材料を冷やすと電気抵抗がなくなる現象(超電導現象)が起こる。 ちなみに、超電導状態に変わる温度のことを「臨界温度」と言い、超電導を示す物体のことを「超電導体」と言う。
現在の超電導リニアで使われている超電導材料はニオブ・チタン合金である。沸点がマイナス269℃(絶対零度+4℃)の液体ヘリウム(ヘリウムは全ての元素の中で最も沸点が低い元素)で冷やし電気抵抗ゼロにした超電導コイルを実現している。
超電導リニアの超電導磁石が発生する磁場は、約5万ガウスであり、力に換算すれば1平方センチメートル当たり100kg(1㎡当たり100t)の強い力である。

また、強力な磁場を発生させる超電導磁石を車両に搭載することは次の経済的メリットもある。
超電導リニアはガイドウェイ(断面が凹字状の案内走行路)に並べられたコイル(電磁石)と車両のコイル(電磁石)の間に発生した磁力(磁極と磁極の間に働く力)により浮上走行する。この磁力の大きさは、両磁石の起磁力(磁束を生じさせる力)の積に比例する。従って、一定の磁力を考えた場合、一方の起磁力が強ければ、他方の起磁力は弱くすることができる。つまり、ガイドウェイに並べられたコイルの数は、車両搭載の電磁石に比べ圧倒的に多いため、車両に起磁力を大きい超電導磁石を搭載することによりガイドウェイ側電磁石の起磁力を弱くできることになり、コストを削減できる。

参考までに、従来の(低温)超電導磁石より高温でも超電導状態が維持できる「高温超電導磁石」も存在する。高温と言っても極低温の世界であることは変わりがない(マイナス255℃程度)。しかし、従来の(低温)超電導磁石はマイナス269℃を作り出すため液体ヘリウムに浸す必要があったが、高温超電導磁石では冷凍機でコイルを冷却するだけで良いため、磁石の構造を簡素化でき、省メンテナンス・低コスト化が期待できる。ただ、まだ本格導入の段階に至っていない。
次の写真は、どきどきリニア館で展示している超電導磁石である。左手前側は宮崎実験線で走っていた「MLU001」に搭載されていた従来の「(低温)超電導磁石」の実物で、右奥側は2005年に山梨リニア実験線で試験走行で搭載された「高温超電導磁石」の模型である。

超電導磁石と高温超電導磁石

※1 永久磁石を利用したリニアの開発
技術の向上に伴い、現在では中国をはじめとした他国で、永久磁石を利用したリニアの開発が進められている。地上側に永久磁石を敷き詰め、その上に高温超電導体(バルク超電導体)の車両を置くことにより、磁気浮上させ永久磁石のガイドウェイを走行させるリニアの開発が行われている。

※2 電磁石
電磁石は、コイル(導線をらせん状に巻いもの)に電流を流すことで磁場を発生させる磁石のこと。永久磁石と異なり電流が流さなくなれば磁石の機能はなくなる。また、磁場の方向は、電流が流れる方向で決まる(社会人には懐かしい「右ねじの法則」)ので、電流の流れる方向を変えることにより磁極を変えることができる。
なお、電磁石の強さは、コイルの巻き数とコイルに流れる電流の強さの積に比例する。

※3 常電導磁石
常温下でコイルに電流を流し、磁場を発生させる磁石。常温化であるため電気抵抗は0ではない。上海で運営されているリニア(ドイツが開発したトランスラビット方式)は、常電導磁石で浮上させている。超電導リニアは10cmの浮上するのに対し、トランスラビットは8mmしか浮上しない。

浮上走行の仕組み

超電導リニアは、一般の電車の様なレールに乗って走行するのでなく、ガイドウェイ(断面が凹字状の案内走行路)を浮上して走行する。
浮上走行を可能にする仕組みとして、「推進」(車両の前進)、「浮上」(車両の浮上)及び「案内」(車両の左右のズレ調整)があり、以下に各仕組みについて解説する。
なお、ガイドウェイ側壁には、「推進コイル」及び「浮上・案内コイル」が設置されている。推進コイルは車両から見て側壁の奥側に設置され車両を推進させる役割を担い、浮上・案内コイル(8の字型コイル)は車両から見て側壁の手前側に設置され車両の磁気浮上と案内の2つの役割を担っている。

推進

コイルに電流を流すと電磁石となるが、側壁の推進コイルは地上の電力変換変電所から電力が供給されることにより電磁石とる。車両は搭載している超電導磁石と推進コイルとの間で発生する吸引・反発の磁力により推進している。
推進コイルを電磁石にする必要があるのは超電導リニアが通過する時なので、通過する時のみ対象の推進コイルに電流を流せば良いが、超電導リニアが通過する位置に合わせて、吸引・反発する位置が変わっていかないと推進し続けることができない。従って、走行している車両に搭載されている超電導磁石の磁極は固定なので、推進コイルの方で通過する超電導磁石の磁極に合わせて磁極を切り換えている(車両が推進コイル1個分進む毎に推進コイルの磁極を切り換えている)。
この磁極の切り替えは推進コイルに交流(一定の周期で電流の向きが変わるので極性が変わる。)を流すことにより実現していて、同期させることいより(電流の周波数を車両の速度に応じて変えることにより)、推進し続ける仕組みである。
逆に推進コイルに推進時とは逆の磁極を発生させるようにすれば、車両にブレーキを掛けることができる。また、車両の駆動力は電流の大きさに比例するので、電流の大きさで駆動力を制御できる。
このように、超電導リニアは速度制御と電力供給を地上でコンピューター制御しているので、運転手が乗車していない。

超電導リニアの推進の仕組み

なお、超電導リニアのギネス記録は時速603kmであるが、速度を上げるには理論上では周波数を高くすれば良いので、更なる高速も容易に可能の様に思ってしまうが、空気抵抗の問題※4があるので容易ではない。
空気抵抗は速度の2乗に比例するので、時速500kmから1,000kmに上がれば空気抵抗は4倍(2倍の2乗)になる。そうなると、使用する電力も大きくなり運行費用に影響し、また車両の強度も問題となる。

※4 空気抵抗の問題を解決する構想

海外では、空気抵抗の問題を解決するハイパーループ構想が現実味を帯びつつあり、注目を集めている。この構想を提唱したのは、テスラモーターズ(電気自動車)やスペースX(宇宙開発)のCEOであるイーロン・マスクである(なお、開発は他社に委ねている)。
ハイパーループは、チューブの中を「ポッド」と呼ぶ車両が浮上走行する。チューブ内は減圧されているので空気抵抗が抑えられ、また浮上するので摩擦もなく、超高速(時速1200kmを目指している)の走行が可能となる。なお、超電導リニアと同じ磁気浮上方式であるが、超電導磁石でなく永久磁石が使われるもよう。
超電導リニアは1962年に研究が始まり、1979年に浮上走行に成功し、長い歳月を経てようやく開業に漕ぎ着けようとしている。一方、イーロン・マスクがハイパーループ構想を発表したのは2013年であり、昨年(2017年)7月には実物大の車両を使ったテスト走行で時速310kmを達成していて、加速距離を伸ばせば現時点でも更に速度を上げられるようだ。開発スピードが凄まじく、現状課題が幾つもあるだろうが順調に開発が進めば、超電導リニアが開業する2027年頃には、超電導リニアがコストのわりには中途半端な速度の運搬手段と評価されていないか心配である。

浮上

ガイドウェイの両側側壁には、浮上・案内コイル(当浮上の解説に於いては、以下、便宜上「浮上コイル」と表現する。)が並べられているので、超電導磁石を搭載した車両が走行すると、浮上コイルに電磁誘導※5が起こり誘導電流※5が流れ電磁石になる。この時、磁場の向き(電磁石の磁極)と流れる電流の向きには「右ねじの法則」が成り立つ。つまり、コイルにできる磁場の向きが右ねじの回る向き(時計回り)で、コイルに流れる電流の向きが右ねじの進む向きとなる。
また、浮上コイルは、上下2つのコイルが8の字型に接続されているので、それぞれ逆向きの誘導電圧(電磁誘導により誘起される電圧)が生じ、またコイルに流れる電流は上コイルと下コイルでは、逆回りとなる。

ここで、車両に搭載された超電導磁石と側壁の浮上コイルとの高さの位置関係からなる次の3パターンで、どのような磁力(吸引力・反発力)が発生するか見てみる。なお、「浮上」の説明に於いて余計な状態を省いた方が理解し易いため、車両がガイドウェイ両側壁の中央を走行している前提で解説する。

超電導磁石が浮上コイルの中心を走行する場合

超電導磁石の磁場を打ち消す磁場ができるような誘導電圧が上下2つのコイルに発生するが、超電導磁石が2つのコイルの中心を通るため電圧は同じ大きさになる。2つのコイルは互いの誘導電圧を打ち消すように接続されているため、同じ電圧だとコイルに誘導電流は流れない。言い方を替えれば、8の字コイルに発生する磁束(フラックス)が、上コイルと下コイルで打ち消し合い、ゼロ(ヌル)になり(ヌルフラックス)、誘導電流がゼロになる。誘導電流が流れなければ車両に搭載されている超電導磁石との間に磁力が発生しないので、浮上等の力が発生しない。

超電導磁石が浮上コイルの中心を走行する場合の仕組み

超電導磁石が浮上コイルの中心より下を走行する場合

上コイルよりも下コイルに発生する誘導電圧が大きくなり、下コイルの誘導電圧に応じた向きの誘導電流が上下コイル全体に流れる。この時、下コイルは超電導磁石と同極となり反発力が発生し、上コイルは下のコイルと逆回りの電流が流れるので超電導磁石と異極となり吸引力が発生する。つまり、車両を浮上させる力となる。また、この浮上力は、超電導磁石が通る位置が浮上コイルの中心から下へズレる程、大きくなる。

超電導磁石が浮上コイル中心より下を走行する場合の仕組み

なお、超電導リニアの安定した走行位置は、浮上コイルの中心でなく、車両の重量に釣り合う分の浮上力が必要なため、中心より下にズレる。

超電導磁石が浮上コイルの中心より上を走行する場合

中心より下を通る場合と逆の現象となる。下コイルよりも上コイルに発生する誘導電圧が大きくなり、上コイルとの間に反発力が、下コイルとの間に吸引力が発生する。つまり、車両を下へ引き戻す力(復元力)となる。これにより、超電導リニアがガイドウェイから飛び出すことなく、安定した浮上を実現している。

超電導磁石が浮上コイル中心より上を走行する場合の仕組み

なお、電磁誘導による磁力は、車両が停止していると浮上コイル内の磁束(磁場の強さと方向)が変化しないので発生しなく、走行して初めて発生し速度が速くなる程大きくなることから、ある一定速度(体験乗車から判断すると時速140km台)を超えないとリニアを浮上させるだけの磁力が発生しない。よって、時速140km台未満では支持車輪によるタイヤ走行となる。

※5 電磁誘導と誘導電流
「電磁誘導」とはコイル内の磁束が変化するとコイルに電圧が生じる現象で、この時に流れる電流を「誘導電流」と言う。電流の向きは磁束の変化を打ち消す向きの磁束ができるように流れる。

案内

超電導リニアは、車両がガイドウェイの両側壁の中央から左右どちらかにズレた場合に、元の中央に戻す「案内」の仕組みがあってはじめて、安定した浮上走行が可能となる。
車両を浮上させるには常に車両の重量を支持する磁力が必要となるが、案内のための磁力が必要になるのは横にズレる場合だけである。よって、ズレていない状態では左右調整の磁力が不要なので、できるだけコイルに電流を流さない仕組みの方が経済的である。
この仕組みに適合した方法として、左右側壁にある浮上・案内コイル(当案内の解説に於いては、以下、便宜上「案内コイル」と表現する。)同士を接続するヌルフラックス方式により、左右それぞれのコイルで発生する誘導電圧に差が生じた時だけに電流が流れる仕組みである。

ここで、車両とガイドウェイとの左右の位置関係からなる次の2パターンで、どのような磁力(吸引力・反発力)が発生するか見てみる。なお、「案内」の説明に於いて余計な状態を省いた方が理解し易いため、車両が案内上下コイルの中心を走行している前提で解説する。

車両がガイドウェイの中央を走行する場合

右側の案内コイルと左側の案内コイルとは電磁誘導によって発生する電圧が等しいため電流が流れなく、案内の磁力が発生することはない。

超電導磁石がガイドウェイの中央を走行する場合の仕組み

車両がガイドウェイの中央から横にズレて走行する場合

案内コイルの上下それぞれに言えることであるが、車両が近づいた側の案内コイルの誘導電圧は、遠ざかった側の案内コイルの誘導電圧より大きくなり、電流が流れる。この時、近づいた側の案内コイルは超電導磁石と同極となり反発力が発生し、遠ざかった側の案内コイルは超電導磁石と異極となり吸引力が発生する。つまり、車両を中央に引戻す力(復元力)となる。

超電導磁石がガイドウェイ中央から左にズレで走行する場合の仕組み

このようにして、車両は常にガイドウェイ中央を走行するように案内されることになる。この案内力も浮上力と同様に、速度が上がる程に大きくなり、高速での車両の姿勢はより安定する。また、低速走行では案内力が不足するので、支持車輪と同様に案内車輪を左右に出しガイドウェイ側壁と接触させ、車両を案内している。

以上の解説から分かるように、推進に関しては地上の電力変換変電所から推進コイルに電流を流し電流を制御する必要があるが、浮上及び案内に関しては電磁誘導を使うことにより、地上から浮上・案内コイルに電流を流す必要もなく、一定の浮上の高さでガイドウェイの中央を走行するよう自然に制御され、上手くできた信頼性の高いシステムである。

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2018年5月6日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

必見!体験乗車一発当選の極意

搭乗予約証明書はがきの裏面

はじめに...
アフィリエイトのタイトルのようになってしまったが、報酬目的のために誘導しようとしている文面でないので安心を! ただ、成果は保証できないので悪しからず。

リニアの体験乗車は常時実施している訳でなく、年3回実施(昨年は3回実施したので、毎年3回実施していると思われる。)し、開催曜日は平日で、1回の開催日数は8日程度となり、1日6便が午前中から夕方に掛けて運行される。
リニアの座席は、既存の新幹線と違い左右に2座席づつ並んでいる。この2座席を1区画とし、区画単位の申込となり最大2区画(4座席)まで申し込める。よって、1人で体験乗車を希望する方でも1区画の申込となり、また団体申込みはできない。なお、1便に対し75区画分確保されていて、また料金は1区画4,320円(税込み)となる。

応募数が定員をオーバーする場合は、先着順でなく抽選となる。これまでの実績から判断すれば、必ず定員を大幅にオーバーし、落選する可能性が高いのが実態である。
私が体験乗車をしてみようかと思い始めた頃、過去の倍率が気になりググってみたところ、「倍率125倍」の記事を目にして驚き、一気に申込む気がなくなった。しかし、「超電導リニア」のオフィシャルサイトの文面でないので、念のため「体験乗車応募お問合せデスク」(電話番号03-6880-3489)に確認したところ、「125倍と言うのは、体験乗車を始めた当初の倍率であり、回を重ねる毎に倍率が低下していき、現在は10倍程度に落ち着いて来ているように思える。」とのこと。

これを聞き申込む気になったが、それでも落選する確率が90%と非常に高いことから申込むに当たって戦略を練ることにした。
申込みに関しては、第3希望まで日時(日にちと便)を指定することができるが、私の場合、自分の都合や希望を一切無視し、皆が嫌がる傾向が高い日時を予想して、嫌がるベスト3を私の希望日時にした。
また、根拠がなく私の感覚的な判断であるが、3つの希望の中で特に第1希望に掛けることにした。と言うのも、どの日時の便に対する申込みであっても、当然第1希望者、第2希望者及び第3希望者がいる。現状の倍率が10倍だとすると、1つの便に対し第1希望者だけで定員オーバーしていると判断した。そうだとすると、当選者を選ぶ側の立場からすれば、第2,3希望より第1希望者を優先に選んでいる(極端な場合、第1希望者の中から抽選し、第2、3希望者は抽選対象外となっている)可能性が十分あると思ったからである(この推測を「体験乗車応募お問合せデスク」に確認してみたが、抽選のプロセスは知らされていいないので分からいとのこと)。

まず、体験乗車は平日実施されるが、平日の曜日で人気の高い曜日を考えてみた。
・月曜日や金曜日に休みを取れば連休になり魅力的なので、人気がありそう。
・個人商店は水曜日が定休日しているところが多いようなので、人気がありそう。ちなみに、私が住んでいる石川県の場合はそうでもないが、不動産屋は水曜日を定休日にしているところが多いと言われている。

上記を踏まえ、人気が高いと思えない火曜日と木曜日を私の体験乗車希望の曜日にすることにした。

リニア見学センター」の休館日は祝日と重ならない限り月曜日であることから、確認はしていないものの、基本的には月曜日に体験乗車が開催されることはないと思われる。

次に、何時の便が人気が高いのか調べてみた。
オフィシャルサイトには、「昼前後の便が申込が集中する傾向にあり。」と記載され、また「体験乗車応募お問合せデスク」に問合せてみたところ「当日、遠方から来る人は1便は時間的に厳しいため、倍率が低くなる傾向がる。」と言っていたこともあり、私の希望の便は最初の1便と最終の6便から選ぶことにした。
なお、1便が狙い目と判断したものの、当初は日帰りの体験乗車を考えていため、私は石川県に住んでいることから電車による日帰りが可能か不安になりダイヤを調べてみたところ、日帰りが不可能であることが分かり困ってしまった。しかし、逆に1便が狙い目だと確信を強めることにもなった。

以上から、私の第1希望を木曜日の1便にしたところ、第1希望で当選した。実際のところ私の戦略が、どの程度功を奏したかは分からないが、当選するまでに何度もチャレンジをする覚悟でいたにも関わらず、初めてのチャレンジで当選できたのだから、戦略効果が多少あったと思いたい。

参考までに、オフィシャルサイトには「週末や開催初日の申込みが集中する傾向あり。」とも記載されている。ただ、私の見方は少しひねくれているかもしれないが、オフィシャルサイトに記載されていれば逆に敬遠する人も少なくない筈である。そうは言っても週末は申込者が多くなるのは避けられないと思うが、その一方で開催初日に関しては、何年間も定期的に開催している体験乗車に於いて開催初日に乗車できることに魅力を感じる人は多いとは思えなく、オフィシャルサイトの記載による初日敬遠の影響を踏まえれば、(開催初日が週末でない前提であるが)むしろ初日の1便が狙い目じゃないのと思ってしまう。

その他、私が体験で得た有意義な情報として次のものがある。
・オフィシャルサイトには、年間の開催スケージュールが公開されている訳ではなく、次回の開催が近付くと次回のスケージュールが公開されるので、過去の開催時期を踏まえながら見逃さないように定期的にチェックする必要がある。
・応募期間は、開催初日の1ヶ月程前に終了してしまうので、申込み時期を逃さないように注意が必要である。
・申込み手段として、電話とインタネット(オフィシャルサイト)の2つがある。インタネットから申込む場合はメールアドレスを入力する必要があり、運悪く落選したとしても、その後は次回の開催スケジュールが決定する度に入力したメールアドレス宛にスケジュールを知らせてくれるようになるので、インターネットによる申し込みを勧める。
・私は乗車時刻の関係上、1泊する必要があったので、最寄りの大月駅周辺あるいは、大月駅がある大月市で宿を見つけるつもりでいた。乗車日2週間前になり、宿泊施設を探し始めると施設数自体少なく、探し始めるのが遅すぎた。満室で断れた宿の人からインタネットに載っていない宿を紹介してもらったがそこも満室で大月市で探すのを諦め、隣の市で何とか予約が取れた。宿泊が必要な方は、当選したら即、宿の予約に動くべきである。

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2018年4月20日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

相対速度500kmのリニア見学センター

以下に、リニア見学センターから見た走行中の超電導リニアの様子、及びリニア見学センター施設の概要について紹介する。

見学センターから見るリニアの様子

超電導リニアを実際に乗車しても当然であるが走行中リニアとの相対速度は0であり、しかも主にトンネル内を走行するので、全くスピード感を味わえなく、車内モニターに表示される速度を信じて時速500kmを体感するしかない。従って、例えば時速250kmで走行していたとしても、モニター上で時速500kmと表示されていれば、乗客は時速500kmの貴重な体験ができたと満足して帰ることになる。
一方、リニア実験線に沿って建っているリニア見学センターの建物から走行中のリニアを見学すれば、間近かで見る相対速度500kmのリニアの迫力は凄まじく、一気に通過するリニアに誰もが驚く。

試験走行の時刻は定まっていないが、リニア見学センターに2、3時間滞在すれば何度も試験走行を見学できる。私もそうであったが、通過するリニアを初めて見た時は「わぁ~、速いなぁ~」と思わず声が出てしまう。なので、周りから「速いなぁ~」との声が漏れると、あの人は通過するリニアを初めて見る人だと判断できた。

私は石川県小松市在住なので、地元では高速鉄道列車の通過を見る機会がないが、米原駅で東海道新幹線が通過する姿をホームから何度も見たことがある。私だけかどうかは分からないが、近づく姿より遠ざかる姿に迫力を感じる。あの大きな鉄の塊が一気に遠ざかって行く様子は、現実の世界では物理的に不可能な運動をしているかのような感覚に陥る。

それでも、米原駅を通過する新幹線の速度は時速250kmを多少超える程度なので、リニアの半分程度に過ぎなく、通過するリニアに思わず驚きの声が出てしまのは仕方がないことである。欲を言えば、米原駅のように目の前を通過するリニアをホームから見てみたいものである。

なお、私は見学センター敷地内の「どきどきリニア館」で撮影していたが、邪魔だったのはトンネルである。東京方面から来るリニアは、前を通過すると同時にトンネルに吸い込まれて行き、名古屋方面から来るリニアは、突然トンネルから飛び出し一瞬で去って行く。あのスピードでこの状況だから、撮影していても気持ちに余裕がなく、思い描く写真を撮るのは容易ではなかった。
走行中のリニア見学としては、同じ敷地内のトンネルから多少離れた位置にある「わくわくやまなし館」の方が良いと思う。また、体験乗車に当選した人へ送ってくるハガキの案合図を見ると、乗降する時に利用する建物の裏は「展望広場」と記載されている。展望広場へも行ってみたかったが、見学センターへ入館した日は雨降りで、また体験乗車した日は河口湖へも行かなければならなく時間がなく、当広場へ行くことができなかった。おそらく雨が降っていなければ、良い見学場所と思われる。

―― ▼動画の解説 ――――――――――
リニア見学センターから撮影した走行中の超電導リニアである。
次の3走行を撮影している。
・東京方面から見学センターを通過するリニア。
・名古屋方面から見学センターを通過するリニア。
・東京方面から停車するリニア。
―― ▲ ―――――――――――――――

リニア見学センターの紹介

山梨県立リニア見学センターは体験乗車の集合場所である「山梨実験センター」とは徒歩で容易に行き来できる場所にあり、路線バスの最寄り停留場は両者とも「県立リニア見学センター」となる。

私は見学するまで誤解していたが、敷地内に「リニア見学センター」と称する建物があるのでなく、次の2つの建物が存在する敷地全体の施設を総称して「リニア見学センター」と言っているようである。

どきどきリニア館

「どきどきリニア館」の外観

超電導リニアやリニア中央新幹線の概要を模型や各種の展示物等によって紹介している施設であり、簡単なリニアの仕組みも学ぶことができる。また、2階と3階には、走行中のリニアを見学できるスペースも設けられている。

なお、1階には、2003年12月に時速581km(当時の鉄道に於ける世界最高速度)を記録した試験車両(MLX01-2)の実物が展示されている。

リニア試験車両(MLX01-2)

◆開館時間
9時~17時(入館は、16時30分まで)

◆休館日
・毎週月曜日。但し、月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休館となるが、火曜日が祝日の場合は開館。
・祝日の翌日。但し、祝日の翌日が金・土・日曜日の場合は開館。
・年末年始(12月29日~1月3日)

◆入館料金
・一般、大学生:420円
・高校生:310円
・中学生、小学生:200円
・未就学の子供:無料

私は都合により入館とリニア体験乗車が異なる日にちになり有料であったが、受付けの職員によると体験乗車した人がその日に入館すれば無料になるとのこと。
20名以上の場合は団体割引あり。

わくわくやまなし館

「わくわくやまなし館外」の外観

1階:売店(特製リニアグッズや地元名産品を販売)
2階:山梨県の観光情報と飲食ができる休憩コーナー
3階:走行リニアの見学スペース

開館時間と休館日は「どきどきリニア館」と同じであるが、入館は無料である。

物足りない方へ

超電導リニアの外観見学の様子だけでは物足りないと思った方は、次のページを閲覧されたし。
乗車体験の雰囲気を味わいたい方へ
雰囲気でなく実際に乗車したい方へ
「山梨と言えば富士山でしょう」と言う方へ
「まずは、リニアの仕組みからでしょう」と言う方へ

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2018年4月14日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:乗物その他

高度0.00001万mの浮上体験

東海道新幹線の将来の経年劣化・大規模災害に対する備え及び混雑緩和として、超電導リニアによる東京・大阪間を結ぶ「中央新幹線」建設が進められている。時速500kmで東京(品川駅)・名古屋(名古屋駅)間を40分、東京・大阪間を67分で結ぶことになる。開業は、東京・名古屋間が2027年、名古屋・大阪間は早ければ2037年(当初2045年開業予定であったが、最大8年前倒)となる。
この中央新幹線の通過予定地である山梨県都留市付近に山梨リニア実験線がある。ここでは、日々走行試験を実施しており、走行試験スケジュールの一部を活用し、一般の人の体験乗車(乗車時間:約30分)を可能にしていて、先日乗車をして来た。
中央新幹線の経路

体験の様子

2度のギネス世界記録の賞状

山梨リニア実験線に於いて、リニアは最も速い磁気浮上式鉄道として、ギネス世界記録を2度樹立している。

最初は2003年12月2日(時速581km)で、実験車両「MLX01」に於いて達成している。「MLX01」は、浮上方式が従来の底面に浮上コイルがある方式から現在の側壁浮上方式へと大改良が行われた車両である。
なお、「MLX01」の「ML」は「Magnetic Levitation」(磁気浮上)の頭文字で、「X」は実用段階に向けた最終実験を表す「Experiment」(実験)から来ている。
車両の外観はコチラを参照。

2度目は2015年4月21日(時速603km)で、実験車両「L0系」(エルゼロ系)に於いて達成している。「L0系」は営業線仕様の新型車両である。
なお、「L」は「Linear」(リニア)の頭文字で、「0」は営業線仕様の第1世代の車両を意味する。
車両の外観はコチラを参照。

「L0系」の体験乗車では、時速600kmを味わうことはできないものの中央新幹線の営業速度と同じ時速500kmを味わうことができる。

体験乗車は1日6便が運行されるが、私は1便に乗車した。
発車時刻の電光掲示板

ボーディングブリッジような設備

リニアに乗降する時は、乗客は駅のホームにいる感覚はなく、まるで飛行場のボーディングブリッジような設備を通ることになる。
これから高度0.00001万mを飛行することになるので、カッコ付けて空港のターミナルビルの印象を醸し出しているのかと思いきや、そうではない。リニアでは、ホームなどの建造物が走行に影響を与えないように車両とホームの間が1.5m離れ、かつ乗客を超電導磁石の磁界から守るために、ボーディングブリッジのような乗降設備を設けているのである。
なお、リニアに取り付けられている超電導磁石は非常に強い磁場を発生する(5万ガウスで、地磁気の10万倍に相当)が、車内の乗客に影響を与えないように(心臓のペースメーカーの限界磁場5ガウスを超えないように)、超電導磁石を鉄で囲んで磁気遮蔽を行っている。

車内の座席

車内は、一般の電車と同様に通路を挟み左右2座席が並んでいる。座った時の座席の空間は、既存の新幹線に比べ狭いと感じた。

山梨リニア実験線は、全長全長42.8kmで4市(笛吹市、大月市、都留市及び上野原市)にまたがり、トンネル区間が全長の82%(トンネル区間:35.1km)を占めているので、体験乗車ではリニア中央新幹線(東京・名古屋間は86%がトンネル)と同様に景色を楽しむことは殆どできない。

乗降する山梨実験センターは実験線の起点(名古屋方面)から28km当たりにあり、次の4回の走行となる。その内の2回で時速500kmの10cm浮上を体験できる。
・1回目:山梨実験センターから終点(東京方面)へ時速320kmで走行。
・2回目:終点から起点へ時速500kmで走行。
・3回目:起点から実験センターを通り越した35km地点当たりへ時速500kmで走行。
・4回目:35km地点当たりから実験センターへ時速285km(東海道新幹線の営業速度)で走行。
体験乗車の走行予定図

―― ▼体験乗車動画の解説 ――――――――――
動画は1回目走行に於ける減速に伴うタイヤ走行から始まり、2回目走行(終点から起点)に於ける全体を撮影したものである。
殆どトンネル内を走行するので、窓からの景色は殆どなく、主に車内に取付けてあるモニターの撮影である。
モニターの映像は、リニア先頭から撮影している進行方向のものが主であり、実験線の起点からの距離と時速も表示されている。

撮影経過時刻とその時の映像内容は次のとおり。
0分02秒:浮上走行からタイヤ走行へ(路面に着くタイヤ)
1分47秒:2回目走行開始(終点からの出発なので、モニターに表示されている距離は終点の42.8km付近から起点の0kmへと向かって行く)。
2分39秒:時速140km台で、タイヤ走行から浮上走行へ。※1
4分23秒:時速500kmに達する(走行時間2分37秒、走行距離9.99km)。
6分24秒:減速を開始し、時速500kmを切る。
9分1秒:時速140km台まで減速した時点で、浮上走行からタイヤ走行へ。
―― ▲ ―――――――――――――――――――

体験に於いては、ボーディングブリッジの様な設備を通って乗車するので、乗車したリニア車両の外観を一切見ることができない。降車後の建物内の通路にガラス窓があり、そこで初めて体験乗車した車両の先頭部分を間近で見ることができる。
先頭部分を見ると分かるように運転手のための窓が存在していない。通常の電車では運転手が運転を制御しているが、リニアでは運転を制御する装置そのものが車両に存在しなく、つまり運転手が乗車していなので窓も不要となる。運行を制御しているのは地上側の管理室(コンピューター制御)である。ただ、運転室はないものの乗務員室があり、乗務員がモニターで運行を監視し、緊急時の対処を車内からも操作できるようになっている。
リニアの先頭部分

※1 浮上の仕組み
超電導リニアは、上海で営業しているリニア(上海トランスラピッド)の様に常に浮上しているのでなく、一定速度を超えないと浮上できなく、その理由は次のとおり。
超電導リニア(L0系)台車側面には超電導磁石があり、地上のガイドウェイ(断面が凹字状の案内走行路)側壁にはコイルが並べられている。リニアが走行すると言うことは地上側壁に沿って走ることになるので、電磁誘導により側壁のコイルに電流が流れ電磁石になる。そうすると、台車と側壁の両磁石の間で吸引力・反発力が発生し浮上する仕組みである。この電磁誘導による力は、リニアが停止している時はコイルを貫く磁束に変化がないので発生しなく、リニアが走行して初めて発生し速度が速い程強くなることから、ある一定速度を超えないとリニアを浮上させるだけの力が発生しない。
なお、浮上走行の仕組みの詳細については、コチラを参照されたし。

乗車の感想

・時速500kmで走行していても、特に気になるような揺れはなく快適な車内であったが、新幹線と比べると振動が大きいと思った。飲み物が入った紙コップを固定せず置くのに躊躇する振動である。
・また主にトンネル内を走行し、加速もスムーズなので、新幹線の倍近いスピードを出している感覚を全く受けなく、モニターに表示される速度で速さを知るのみである。スピードを肌で感じることがないので、スピードに対する感動は非常に薄く、モヤモヤ感が残った(⇒上の車内から撮影した動画を見て迫力に欠けると思った方はコチラを参照)。
・タイヤ走行から浮上走行への切り替わりはスムーズでありアナウンスが流れないと浮上したことには気付かない。一方、浮上走行からタイヤ走行への切り替えは撮影していたカメラが大きく揺れる程の衝撃で、周りから驚きの「オ~」との声が漏れていた。「10㎝の浮上でも飛行機と同じかよ。」と突っ込みたくなった。

余談であるが、素人だけに、この衝撃の理由について思い巡らしてしまう。
・高度0.00001万mからのランディングなので、飛行機と同様に衝撃が発生するのは当然なのか?なぜ、コンピューター制御でソフトランディングできないのか?
・飛行機の着陸に於いて衝撃のないように滑らかに路面に着くと、停止距離が長くなり、更に路面が濡れている状態ではハイドロプレーニング現象が起き易くなるため、パイロットは故意に衝撃を与えていると聞いたことがある。同様にリニアに於いても安全に停止できるよう故意に衝撃を与えているのだろうか?
・そもそも、通常運行のリニアに於いて、タイヤ走行中の減速にはディスクブレーキを使っているのだろうか。緊急停止には使うだろうが、通常は使っていないとしたらハイドロプレーニング現象が発生したとしても停止距離に影響がないように思うが、どうなんだろう?

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2018年4月11日 | コメントは受け付けていません。 |

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護衛艦「かが」を見学

現在、港フェスタ金沢2017のイベントの一環として、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「かが」が、石川県の金沢港に寄港している。7月14日から4日間停泊する予定で、15日が唯一、一般人が乗艦可能な日であったので、その日、乗艦するため朝早くに出かけた。

混み合う駐車場

乗艦希望者が多く集まることが予想されていたので(海上自衛隊発表の実際の見学者数は、15,052人)、埠頭近辺の臨時駐車場には駐車できないだろうと判断し、最初から埠頭から離れた4箇所の駐車場(シャトルバス運行)の1つに向かった。乗艦開始予定時刻の45分前に目的の駐車場に着いたものの、駐車場の入口にいた警備員が、満車の紙を掲げている状態だった。
別の駐車場に向かう前に、警備員に声を掛けてみたところ、以外にも「埠頭の臨時駐車場がまだ空いている。」との情報を得て、結局最も駐車困難と思っていた埠頭の臨時駐車場に駐車することができた。私のように最初から埠頭の臨時駐車場を敬遠した見学者が多くいたようだ。

埠頭臨時駐車場に着いた時点で、乗艦希望者の長い行列がこの駐車場に接する道路まで伸びていた。列に並んでいると、離れた駐車場から歩いて来た人の話声が聞こえ、「シャトルバスが混んでいて、多くはバスに乗らず歩いている。」とのことだった。

護衛艦「かが」の解説

艦名の「かが」は、日本の令制国(旧国)の中で最後に独立した「加賀国」(かがのくに:誕生は平安時代で、エリアは現在の石川県の南側半分)に由来している。 加賀国が由来している艦艇は、護衛艦「かが」以外にも、かつて旧海軍の空母「加賀」※1が存在していたので、艦艇としては2代目となる。

護衛艦「かが」は、2015年8月に進水し、2017年3月から就役している海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH:ヘリコプター護衛艦を意味する記号)であり、いずも型護衛艦※2の2番艦である。また、海上自衛隊のヘリ空母(空母のような広い甲板を持つ海自の護衛艦)は、ひゅうが型の「ひゅうが」と「いせ」、いずも型の「いづも」と当「かが」で、4艦となる。

護衛艦「かが」のスペック等は次のとおり。
・基本排出量:19,500トン
・全長:248.0m
・全幅:38.0m
・速力:30ノット
・搭載機:哨戒及び輸送ヘリコプター最大14機、
・備考:最大5機のヘリコプターが同時離着陸が可能で、またオスプレイの離着陸も可能

※1 空母「加賀」
空母「加賀」は、元々戦艦「加賀」として建造された(1921年[大正10年]進水)。しかし、米国が提唱したワシントン会議(1921年[大正10年]~1922年)でワシントン海軍軍縮条約が採択され、最終的には主力艦の総排水量比率が、米と英:日:仏と伊=5:3:1.67に制限されたことにより、戦艦「加賀」の廃艦が決定される。
その一方で、空母を重要視していた日本海軍は、戦艦「天城」を空母に改造していたが、関東大震災(1923年[大正12年])の損害より改造不可能となり、その代艦として空母「加賀」が誕生することになる。
なお、ワシントン会議の米国の目的は、米国・英国・日本の軍艦建造競争を終わらせ、自国の財政負担を軽減する以外にも、東アジアに於ける日本の膨張を抑えることにあった。一方、日本が条約を受け入れた理由の1つは、日本も軍事費が重い負担になっていたからで、条約前の軍事費が国家歳出の約5割であった。

真珠湾攻撃(1941年[昭和16年])にも参加し、ミッドウェー海戦(1942年[昭和17年])で米軍の艦上爆撃機による急降下爆撃が原因で、大爆発し沈没した。1999年(平成11年)に米国の深海調査会社ノースティコスが沈没した「加賀」をミッドウェー島沖合の深海5,200mで発見している。
なお、空母「加賀」も1930年(昭和5年)から何度か石川県の金石沖に来ている(船体が大き過ぎて金石港で停泊できず)。

・基本排出量:26,900トン
・全長:238.51m
・全幅:31.67m
・速力:約27ノット
・搭載機:戦闘機16機、偵察機16機、攻撃機28機

【戦艦から空母に改造中】
「加賀」の戦艦から空母に改造中
【船体側面】
空母「加賀」の側面
【大炎上(イメージ画像)】
空母「加賀」の大炎上(イメージ画像)
【海底に沈む空母「加賀」の残骸】
海底に沈む空母「加賀」の残骸

※2いずも型護衛艦
海上自衛隊が運用するヘリコプター搭載護衛艦に於いて、先行して配備されているひゅうが型を基に大型化し、多用途性及び航空運用機能を強化したものである。
ひゅうが型は単艦での戦闘能力を持っているが、いずも型は艦自体の戦闘能力は低く抑え、ヘリコプター運用に重点を置いている。単艦では運用せず、護衛艦(e.g. イージス艦)を伴った艦隊としての運用を前提としている。

見学の感想

◎金沢港のイベントに参加するのは今回が初めてだったので駐車場の混み具合が良く分からず向かったが、今後金沢港で催されるイベントに参加することがあれば、今回の経験が大いに参考になると感じた。
◎これまで見た船で一番大きかったのは、学生時代に海外へ旅立つ友達を横浜港で見送った時の船だった。今回、駐車場を出ると停泊中の馬鹿でかい「かが」が否応なしに目に止まり、学生の時に見た船とは比べものにならない圧倒的な存在感があった。
◎格納庫と甲板を繋ぐエレベーターはビルのフロアー丸ごと動く感じで、振動が殆どなく、スムーズな動作で一度に多くの見学者を運んでいる姿に感動した。エレベーターに配置されていた自衛官は、重量制限を気にする気配もなく、エレベーターに乗りたい人がいればお構いなしに乗せていたが、一般のエレベーターのように重量オーバーのブザーが鳴ることはなかった。エレベーターのスペックを調べていないが、これならVTOL(垂直離着陸)可能なF-35B※3(全長15.61m、全幅10.67m、空虚重量14.5t、最大離陸重量27t)を載せても、物理的に何の問題ないように思えた。

※3 F-35
F-35は、レーダで捉え難いステルス性に優れた最新鋭戦闘機(第5世代戦闘機)である。離着陸方法等の違いから次の3種類に分類される。

・F-35A(米空軍向け)
通常離着陸(CTOL:Conventional TakeOff and Landing:シートール)型であり、長い滑走路を持った陸用基地で運用。
ちなみに、航空自衛隊が導入したF-35は、このA型である。

・F-35B(海兵隊向け)
短距離離陸垂直着陸(STOVL:Short TakeOff/Vertical Landing:ストーヴル)型であり、滑走路のない陸上からでも、あるいはカタパルト(航空機が短い滑走で離陸できるように、航空機外部から力を加えて加速させる装置)を持たない狭い甲板からでも運用可能。

ちなみに、F-35Bは垂直離着も可能であり、垂直離着陸(VTOL:Vertical TakeOff and Landing:ヴィトール)型とも言える。ただ、垂直離陸を行うと大量の燃料を消費すること等から、通常は離陸時に短距離の滑走を行い着陸時に垂直着陸を行っている。このように一般的には、STOVL型とVTOL型の異なる機種が存在するのでなく、VTOL型が運用面に於いて離陸時に短距離の滑走を行っているにすぎない。

・F-35C(米海軍向け)
カタパルトを備えた正規空母でしか運用できない。着艦速度をおとすために翼面積を増やし、強制着艦の衝撃に耐える強度を持たせた設計。

護衛艦「かが」の画像

【外観】
全貌(護衛艦「かが」)
側面(護衛艦「かが」)

【格納庫】
格納庫(

【甲板と格納庫を繋ぐエレベーター】
エレベーター下降開始前(
エレベーター下降開始(
エレベーター下降中(
エレベーター下降終了(
エレベーター上昇後の格納庫状態(

【甲板】
甲板(

【艦橋】
艦橋(

【哨戒ヘリコプター】
哨戒ヘリ(

【SeaRAM近接防衛システム】(超音速対艦ミサイル防衛のために使用)
SeaRAM(

【ファランクス近接防衛システム】
(巡行ミサイルや航空機からの攻撃に対する最後の防衛手段として使用)
ファランクス(

【旭日旗】
旭日旗(

【見学者の行列】
行列(

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2017年7月17日 | コメントは受け付けていません。 |

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迫力のダンプトラック「930E」

ダンプトラック「930E」の右前方とタイヤの半分以下の一般男性

こまつの杜」(場所:小松駅東口前)内に展示してあるダンプトラック「930E」は、迫力満点である。

930Eは、㈱小松製作所の米国子会社であるコマツアメリカ(株)ピオリア工場で製造している世界最大級の電気駆動式ダンプトラックである。海外の大規模鉱山で活躍している。

展示のダンプトラックは、南米チリのロス・ペランブレス銅鉱山で使用していたもので、太平洋を渡り、こまつの杜にやってきたものである。

ダンプトラック「930E」の右前方

ダンプトラック「930E」の前方

ダンプトラック「930E」の左前方

全高7.3m、最大車体重量500トン、最大積載量は297トンで、数値が大き過ぎて実は私自身ピンとこないが、桁違いのトラックであることは分かる。
297トンの荷物を運べる訳だから、小学生の平均体重が40kgとすると、7,425人を運ぶことができることになる。小松市には25校の小学校があり児童総数が6,628人(平成23年5月時点)である。つまり、小松市の小学生全員を余裕で運ぶことができる凄さだ。

930Eは本体に注目が集まりがちだが、タイヤも凄い。
直径3.8m、幅1.3m、重量4.8トンで、タイヤも世界最大級である。このタイヤ1本で約80トンを支えることができる。スペースシャトルの空虚重量(乗員、荷物や燃料を含めない機体自体の重さ)が78トンだから、タイヤ1本でスペースシャトルを支えることができる。

また、この巨大トラックの最大速度は時速64.5キロで、無人運転もきると言うことだから驚きである。そんなことを知ると、世界一贅沢なおもちゃのように思えてしまう。

でも、なせ無線で動かせるようにになっているかと言うと、複雑な鉱山の地形は、衝突、転落や落石など、いたるところに危険が潜んでいる環境なので、運転手の安全面を考慮しているからである。
GPSと無線を使ってリアルタイムに930Eを集中管理しているので、ダンプ同士が衝突する心配もなく、過酷で危険な鉱山でも対応できるようになっている。このことがとても便利と評判になり、今では世界中の鉱山で使用されるようになった。

ダンプトラック「930E」の右後方

ダンプトラック「930E」の後方

ダンプトラック「930E」の左後方

こまつの杜で存在感を示しているこのダンプトラックが、なぜ930E(キュウサンマルイー)と呼ばれているかと言うと、
・「930」は総重量を示している。つまり、930,000LBS(LBSは、ポンドの省略記号で、1ポンド=約453.6g)と言うことである。なお、現在では品質改良により更に重量が増えている。
・「E」はエレクトリックのこと。つまり、電動式を示している。

「わくわくコマツ館」の開館日」に行けば、1日2回(午前10時半~11時、午後3時半~4時)、運転席に座ることができる。また、午後0時から約30分間は荷台を上げた姿を見ることもできる。

日本ではこの1台のみなので、一度見に行く価値がありますよ。

「こまつの杜」の駐車場について

ダンプトラック「930E」の360度撮影

※聞こえてくる喋り声は、小松弁だ!

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2012年5月16日 | コメントは受け付けていません。 |

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